803.【3】無菌室 ページ3
［翔にぃside］
今回、珍しく
よく泣く智にぃ。
緊急事態が相当堪えたみたい…
智にぃは特に
和と共に過ごす時間が長いから…
和「…とに、…か…い…？」
智「うん、ありがとね…かず…」
呼吸をするのが精一杯の和だけど
智にぃを見つめて「智にぃ、泣かないで…？」
って言ってくれてる。
和はみんなが揃って嬉しいんだろう。
名前を呼んだり「ありがと…」って
言おうとしたり…
でも、それに伴って酸素が足りなくて
唇が紫に変色し始める…
「ごめんね、かず。しゃべりたいと思うけど
我慢して。な？」
和「…ん、や、…けな、い…」
酸素マスクをつけようとしたら
それを嫌がってポロポロ泣き出す和。
出来れば泣かすことも避けてやりたい…
「大丈夫だから。みんないるから。な？」
雅「そうだよ〜、泣かなくて大丈夫…」
雅紀の手が和の頭をゆっくり撫でてくれる。
安心したように目を細める和。
大きくて優しい雅紀の手は
和の心を落ち着けてくれるね…
体力的にも厳しい和は
目を開けているのがやっとだけど…
和「…な、い。…す、り、だ、め…」
「寝たくない」「薬は駄目」って
訴えてくる。
もうすぐ俺らから離されるって
直感で感じとってるのかもね…
ゆっくり休ませてやりたいと思う反面、
もう少し関わって、温もりを感じて欲しいと
願う俺。
矛盾した自分の気持ちに嫌気がさす…
黙る俺に和は手を伸ばしてきて
「ずっといて…」って繰り返す。
和「…っと、…て…」
和はここがICUだということに気が付いて
面会が短いことを悟ったんだろう。
和はICUが嫌いだからね…
でも、これから和は初めて無菌室に
入れられる。
こういう状況になった時
悔やまれるのは、やっぱりあの時のこと。
それさえなければ、和はICUだって
無菌室だって、頑張れるのに。
突端恐怖症から始まった、医師恐怖症に
分離不安…
そのどれもが和を苦しめるのは明白で…
俺はつい、小さくため息をついてしまった…
和「…う、し、た、の…？」
和の声にハッとした時には、もう遅い。
不安そうに向けられた和の目…
俺はベッドサイドに腰掛けて
和の手を取り、無菌室のことを話した。
和「…だ、や、だ。…ねが、い…や、だ…」
途中から泣き出した和は、
苦しそうな呼吸をしながら精一杯の拒否。
「落ち着いて。大丈夫だから。」
なにが大丈夫なんだろう…
綺麗事しか言えない自分の言動に笑えてきた。
だって、今…
何を言っても無駄だろう…
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作者名：空
| 作成日時：2013年8月8日 7時
