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［翔にぃside］
目の前の智にぃは
すごい剣幕で怒って
和を睨んでからリビングの
ドアを閉めた。
玄関に取り残された和を見て、
雅紀がすぐに和の所にいってくれて。
原因作ったのは俺だから、何とかしなきゃって
思ったんだけど、上手く言葉が出てこない…
「治す力もねーくせに！」
さっきの一言が息するのを邪魔してくる…
そうだ…俺に治す力がないから
助けたい患者さん達が亡くなっていくんだ…
「…めん、なさい、ごめんな、さい…」
智「しょう？だいじょうぶだよ？
ゆっくり呼吸してごらん？しょう…？」
気が付いたら俺は床に座り込んで
ただ謝っていて…
智にぃがそんな俺の背中を優しく撫でて
声を掛けてくれた。
「…すけられ、ない…ごめんなさい…」
智「なに言ってんの…だいじょうぶだよ…？」
だって俺は目の前の大事な弟一人、
助けられないんだから…
「…すけたい、よ…」
智「うん、分かってるよ。翔が努力してること
知ってるから。ね？」
「たすけ、たい…のに、…んで？」
智「翔は沢山の人を助けてるよ。
お手紙、沢山もらったでしょ？
ありがとう。って書いてあったでしょ？」
智にぃはゆっくりと背中を撫でてくれて
床に座って泣く俺を、
そっと抱き寄せてくれた。
智「だいじょうぶ。和も分かってるから。
あれは本心じゃないよ。ね？」
和の本心じゃない…
分かってるつもりなのに
俺が弱いからこんなことに…
「…とにぃ？俺の為に、あんなに叱らなくて、
いいよ？大丈夫、だから…」
智「翔？それは違うよ？」
智にぃは俺の肩を体から離して
顔を覗き込んでくる。
智「俺はね、いくら本心じゃなくても
言っちゃいけない言葉があると思う。」
「…うん」
智「俺は、それを分かってほしいだけ。
和なら分かってくれるって思うから…」
智にぃはそう言って
また俺を抱きしめてくれた。
背中に回された手が小さく震えていて…
智「あと少しで、あいつのこと
叩きそうだった…
雅紀が止めてくれなかったら、たぶん俺
今ごろ後悔してたと思う…」
「ん…雅紀がいてくれて、よかったね…
俺も、智にぃがいてくれて、よかった…」
智「ふふ…5人いれば、間違った時に
教えてもらえるね…
迷った時に、教えてもらえるんだね…」
「ん…、ありがと…」
甘えたくなって胸元をキュッて掴んだら
「ふふ…」って笑った智にぃ。
それから背中をポンポンしてくれて
「俺さ、翔が傷付くの見たくなくて。
感情的になってごめん…」って呟いた。
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作者名：空
| 作成日時：2013年8月8日 7時
