818.【2】 ページ18
［翔にぃside］
俺はまた一人
患者さんとの
別れを経験した…
何度経験したって慣れることはなくて。
「また智にぃに気遣わせちゃったなぁ…」って
思いながら、ベッドに潜り込んだ。
智「しょう？翔？大丈夫？」
いつの間にか寝てしまっていたみたい。
肩を叩かれて目を開けたら、
目の前に智にぃの優しい笑顔があって…
智「目、覚めた？泣いてたから…」
智にぃはそう言って、俺の頬に残った涙を
優しく拭ってくれて。
「ごめん…夢、見てた…」
智「そっか。毎日、お疲れさま…」
この一言で、智にぃが
全て分かってくれてるって実感して…
「…きのう、かんじゃ、さん…ね…」
言葉が自然に飛び出してきたけど
上手く喋れたのはここまでで…
後はしゃっくり上げてたから、
たぶん伝わってない。笑
智にぃだから、分かってくれたと思うけど。
智「うん、わかった…泣いていいから。」
ずっと腕の中に俺を入れて
ギュッてしてくれて
心がどんどん軽くなるのが分かった。
「…りがと、智にぃ。」
落ち着いてきたら、何だか恥ずかしくて。
俺は照れ隠しに「和は？」って
聞いてみたりしちゃって。笑
智にぃはそんな俺の気持ちを知ってか、
ニコッと笑って「落ち着いて眠れてるよ」って
教えてくれた。
和は今回、学校に行けなくて悔しい気持ちを
セーブできていないから、
できれば一人にしない方がいい。
こういう時は、無茶して脱走することも
よくあるからね。
ほんとは俺が傍に行けたらいいんだけど、
今はまだ、こんな顔だし。笑
智「じゃあさ、和のところで待ってるから。
落ち着いたらおいで？」
翔「ありがと…」
俺は冷たい濡れタオルを目に当てて
しばらく休憩…
こんなに泣いたのは久しぶりだ。
弟達のまえでは、それなりにプライドは
あるしね。
ただ、智にぃの前だったら何だか素直に
なれる自分がいて…
その結果がこれ。笑
俺は一人なのに「ははっ」って笑ってしまって
「気持ちわりーよ…」って
一人でつっこんだ。笑
雅紀がいたらさ、
つっこんでもらえたんだけどね。
だいぶ時間を空けて和の部屋を覗いたけど…
和「…だれも、来てくれなくて、いい…」
和は相変わらず機嫌が悪い。
お昼ご飯も、ほとんど食べてないし
水とかも飲みたがらないらしいから
強制的に点滴。
智にぃに抑え込まれて
俺に針を刺された和はポロポロ泣いて
「出てけ！一人にしろっ！」って叫んで
布団に隠れてしまった…
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作者名：空
| 作成日時：2013年8月8日 7時
