747.【2】脱走犯 ページ47
［翔にぃside］
智「ちょっとシャワー
浴びてくるね」
和「ん、はーい」
和もさっき頭を洗ってもらったから
少しは気分も晴れたんだろう。
素直に頷いて、手をひらひらさせて見送った。
時刻は20時すぎ…
一般の面会時間も終わり
病棟内は比較的静かだ。
和と他愛も無い話で盛り上がっていたら
看護師からヘルプの要請が入った。
「兄が戻ってきたら、すぐ向かいます」
一応、勤務時間外だから和を優先する。
でも和が「一人で待てるから、いいよ…？」
って言ってくれて。
それなら、早く済ませて戻ってこようって
思って病室を後にした。
もちろん和には「病室から出ないこと」って
言い聞かせて、約束をさせて。
和は「分かってるよ…」って、
ちょっと不満そうだったけど。
何だか今日は、和が外に出たくて堪らないって
オーラを出していたから心配で…
俺はしつこく言い聞かせた。
まさか、それが本当に当たるなんて
思ってもなかったけど…
結局、1時間ちょっとで病室に
戻ったんだけど、病室はからっぽ。
智にぃがジュースでも買いに連れ出して
くれたのかな。とか思いつつも
何だか胸騒ぎがして…
「もしもし、智にぃ？今どこ？」
智「え？それはこっちのセリフ。笑
戻ったらいないんだもん！！」
智翔「和は？」
智翔「…え…」
一瞬フリーズした俺ら。
すぐに合流して、院内を走りまわった。
手の空いてるスタッフも含めて
とにかくみんなで探したけど…
智「病院から出たんじゃない？」
「まさか…」
約束したし、言い聞かせたのに
そんなはずはない。
そう思ったけど、不満が爆発してれば
そんな約束は関係もないか…って
納得できる自分もいて。
俺らは「院内で見つかったらすぐ連絡下さい」
って頼んで家にも連絡を入れてから
病院の外を探すことにした。
外はどしゃ降りの雨…
こんな中、傘も持たずに飛び出したのか…？
俺らが持って出たビニール傘も
役に立たない程の荒天…
「あいつ、まだ良くなってないから…
こんな中、長い時間いたら駄目なんだって…」
智「うん、分かってるよ。大丈夫だから」
募る心配に押しつぶされる俺の肩を
智にぃは優しく支えてくれる。
智「翔？体、熱くない？」
実は俺、今日は朝から熱があって
風邪っぽい症状が出てたんだ…
薬で何とか誤魔化してたけど、
また上がってきたみたい。
観念してそう話したら「もう…一回戻るよ」
って、手を引いて歩き出す智にぃ。
「…待って？探したい…」
智「だ〜め！」
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作者名：空
| 作成日時：2013年6月20日 18時
