578.【頑張りやさん】 ページ28
［智にぃside］
翔「かずー、
分かるー？」
和「…しい」
ボーッとして一点を見つめたままだけど、
和は呼吸の苦しさを訴える。
久しぶりに大きな発作を起こして
挿管する一歩手前まで容態が悪化した。
翔「ちょっと、ごめんね〜」
翔が聴診しても反応できず
力を使い果たしてしまったみたいに
ボーッとしてる…
翔「発作止めの薬のせいもあるから。
ちょっと様子みようか」
潤「ねぇ、これは？とっていい？」
翔「それは、まだ外せないな。
大丈夫だよ、落ち着いたら外すから」
潤は和の手足を固定している拘束具を
外してやりたくて仕方ないみたい。
そりゃ、そうだよね…
でも、呼吸が苦しくなると
もがいてバタバタ暴れて危険だから。
翔が何度も「和を守る為だから」って
潤に説明して、ようやく納得してくれた。
翔「苦しいの早く治るように頑張るからな」
翔は反応がない時にも優しく声を掛けて
診察してやる。
翔「ちょっと休もうね〜」
なかなか目を瞑ってくれない時は
タオルで目を覆うんだけど、
そうすると見えなくて
可哀想だからって潤が手を握ってくれる。
雅紀も仕事帰りに必ず寄って
声を掛けたり、体をマッサージしたりして
刺激と温もりを伝え続けてくれた。
だけど、和の容態はなかなか安定しない…
発作は何度も体を襲って和を苦しめる…
拘束されているのにバタバタ暴れて
苦しさで、もがく和を見るのは本当に辛い。
和「…しい、とる…」
もがきたいのに、体の自由を奪われるのは
相当な辛さだろう。
拘束が嫌だと訴えてくる。
和は意識がある時は「苦しい」か「とる」しか
言わなくなってしまった。
それも朦朧としたように伝えるのがやっとだ…
翔「これ以上強い発作止めはやめた方が
いいって。でも、何度も発作起きる様なら
体がもたない…どうする？どうしよう…」
翔が珍しく悩んでいる。
ここ数日、翔は病院に泊まり込んで
治療法を考えたり、和の診察をしたりと、
ほとんど休んでいない。
「翔、少し休む？」
翔「ん…平気。
ねぇ、和は頑張りやさん…だよね…？」
「うん、すごくね。
翔も頑張りやさんだよ、ちょっとで
いいから。休んで？」
翔「ん…へいき」
今は勤務時間外だから、ほんとだったら
仮眠してほしいんだけど…
翔は和から離れたがらない。
先「失礼します…どう？
あ、翔くん…仮眠室行けって言っただろ？」
翔「…」
翔は病室を覗いてくれた先生を見て、
バツが悪そうな顔をして俯いてしまった…
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作者名：空
| 作成日時：2013年4月15日 18時
