572.【2】 ページ22
［翔にぃside］
大勢の医師を
和に見せたくない…
今の和は周りを気にする余裕がなくて
幸いなことに、まだ気が付いてない。
俺は教授に声を掛けた後、
すぐに智にぃと雅紀に合図して、
和を支えてもらおうと思ったんだ…
だけど、教授は笑顔のまま和の前に
しゃがみ込んだ。
教「たかが採血じゃないか」
あまりの信じ難い言葉に
俺は一瞬言葉を失った…
でも、すぐに止めなきゃって本能が働く。
「…やめて下さい」
教「こんな所まで逃げてきて…」
尚も続けようとする教授の肩を押して
俺はやめさせる。
教授は笑いながら「こんな手が掛かる弟がいて
君も大変だね。情けないな…」って呟いた。
ふと和に目をやると…
黙って教授を見つめたままの
頬を涙が流れていた…
「…んも知らないくせに！」
先「翔くん！！」
和の姿が可哀想で堪らなくて…
感情を抑えきれなくなった俺は教授に
掴みかかろうとした。
だけど誰かに止められて抑えられる。
先「落ち着きなさい。翔くんがここで
取り乱したら、一番責任を感じるのは
和くんだよ？」
諭すように優しく掛けられた言葉で
先輩だって気付く。
でも、それと同時に全身の力が抜けて
その場にしゃがみ込む…
先「智くんと雅紀くんで、和くんのこと
検査室に運んでくれる？翔くん、立って…？」
抱きかかえられた和は検査室に入れられる。
俺も先輩に支えられて検査室の中に入って
ベッドに腰掛けた…
和「…だ。や…。やだ…」
ドアの前で泣いている和。
涙は止まることなく頬を流れていく…
先「かずくん。大丈夫。
今日は何もしなくていいよ。少し落ち着いたら
お兄さん達と一緒に帰ろうね」
先輩は和の前にしゃがみ込んで
ゆっくり声を掛けて頭を撫でてくれた。
落ち着いてきた和だけど
俯いたままで顔を上げようとしない…
それでも先輩は和の体に温もりを伝えて
声を掛け続けてくれた。
智「ほんとに、ありがとうございました」
先「こっちも落ち込んじゃってるから
大変だね。笑
智くん、翔くんお願いね」
先輩は茶化しながら俺の肩をポンポンと叩く。
だけど、すぐに厳しい顔つきで俺を見つめて
小さく呟いた。
先「しっかりしなさい。翔くんがそんなんじゃ
和くんは立ち直れない。だろ？」
「はい…」
先「よし、よろしい。笑」
「やめてくださいよ…」
ふざけて頭を撫でてきた先輩に
思わず笑顔になる。
智「さて、いこうか。失礼します」
俺は智にぃの言葉に
しっかり頷くことができた。
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作者名：空
| 作成日時：2013年4月15日 18時
