561.【3】治療 ページ11
［智にぃside］
今日は和の治療の日。
潤をフットサルに見送った和は
ラグの上で、あらしと戯れて
きゃっきゃ笑っている。
朝ごはんを食べている時は、そわそわして
落ち着かなかったけど今は少し
落ち着いてきたみたいだ。
翔「和？薬飲んでく？」
翔は安定剤の錠剤を持って、
ラグの上に座った。
和「んーん、いい…」
翔が目を捉えようとしても、和は必死に
逸らそうとしてる。
翔「…ドキドキしてるのラクになるよ？」
和「…いい」
相変わらずラグの上でゴロゴロしてる
和だけど、落ち着かなくなってしまった。
翔「…そっか。じゃあ、飲みたくなったら
智にぃに言うんだよ？渡しておくから」
和「…」
翔「…あんま無理すんなよ？
もたなくなっちゃうからな？」
和「ん…」
翔「よしよし。仕事行ってくるね」
和は一度も翔を見ようとしなかったけど、
頭を撫でられて安心した様に
小さく笑った。
翔は「オペだけ終わったら、すぐ帰って
くるから」って俺に呟いて足早に家を
出て行った。
雅「かーずー、そろそろ着替えたらー？」
和「…うん。持ってきてー？」
まだ甘える余裕があるうちは大丈夫。
雅紀は「自分で取りいけよ〜」とか
ブツブツ言いながらも着替えを持ってきてやり
ラグの上にポンと置いた。
だけど、和はなかなか着替えに手を伸ばさず
新しいゲームを始めてしまう。
嫌な気持ちが強いから、踏み出せないみたい…
気持ちは分かるけどね。
誰だって嫌なことは後回しにしたくなるし。
でも、時間は待ってくれない。
「そろそろだよ？」
時間が迫ってきたから声を掛けたら
和は渋々、ゲームをやめて着替えを始めた。
大人しく着替えてくれて
ホッとしたのも束の間…
「歩いて行きたい…」
「あらしも一緒がいい…」
「翔にぃの病院がいい…」
和の口からは次々に無謀だと分かっているで
あろう言葉が飛び出す。
そんな和を雅紀と2人で何とか慰め、
車に乗せた。
「降りといで〜？」
和「…ん」
病院に着いてからは思ったより手こずらせず…
自分で歩いてくれたし、先生にも挨拶できた。
和「…先生だけ、が、いい」
歯科助手さんを警戒する和に、
先生は優しく声を掛けてくれて
診察室の外で待つように伝えてくれた。
この病院は一人ずつしか治療しない。
だから待合室もないし、部屋も一部屋で
診察のベッドと診察台が1台ずつあるだけ。
病院ぽくない雰囲気が少しは安心に
繋がると思って選んだんだ…
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作者名：空
| 作成日時：2013年4月15日 18時
