551.【脱走の常習犯】 ページ1
［翔にぃside］
看「翔先生、
和くん中庭にいますよ？」
俺がゆっくり昼休憩してんのに
また呼び出された…
もう退院させたいよ…笑
ちょっと数値が悪いからって入院させた俺が
間違いだった。
中庭に向かって歩いて行ったら、
日向ぼっこしながらベンチに座ってる和。
声も何も掛けてないのに
近付いて行ったら、なぜか俺に気が付いた和は
慌てて立ち上がって走って逃げ出す。
「和！走んな！」
俺が怒鳴っても、振り向きもせず走っていく。
「和？逃げなかったら叱らんないよ？」
もう何度目かってくらい使い込んだこの作戦。
だけど、和は叱られたくないから
逃げてるわけだから…
この言葉でピタッと動きを止めるんだよね。
だから、ついつい使っちゃう…笑
和「…元気だもん。部屋帰りたくない…」
「勝手に抜け出すなって。
どーして誰にも言わないで来ちゃうの？」
和「…むぅ」
「そんな可愛い顔してもだーめ！」
和「…ここにいる」
「だーめ！戻るよ？」
俺に引っ張られても足を突っ張る和。
「もう！いい加減にしなよ？」
和「あ、いて！！…ばか！」
お尻をペチンと叩いたら素直に歩き出した。笑
最初から言うこと聞けば、
痛い目に遭わずに済むのにね…
智「あ、かずー？どこも行かないでって
言ったでしょ？」
どうやら智にぃがトイレに行ってる隙に
抜け出したらしい。
和「ん…。翔にぃ、ここ叩いた…」
涙目で智にぃに寄っていく和。
自分が悪いくせに、ほんとずるい。
智「ごめんなさいしたの？
悪いことするから叩かれたんでしょ？」
和「…まだ。でも、ちゃんと走るのやめた…」
智「ふふ。それはえらかったね。笑」
智にぃは和の一言で、叱らない条件付きで
大人しく帰ってきたことを悟ってくれた。
看護師たちからは「やんちゃで
可愛いですね〜」なんて言われてる和。
だけど、俺らからしたら
とっくに「やんちゃ」なんて言葉じゃ
誤魔化されないレベルを超えてる…笑
和「翔せんせー、散歩してくるね〜」
許可をもらえと言ったからか、
俺が居るであろう方向に大声で叫んで
とっとと逃げていく奴…
一体、そんなずるい事
どこで覚えてきたんだ？
先生にも看護師にも笑われて…
呆れられてもしらないからな？笑
どうせまた中庭だろうと思って
少ししてから覗いたら
やっぱりいた…
でも今日は隣に、もう一人。
入院患者のお婆ちゃんがいた。
楽しそうに笑っている和の顔は
安心しきっている…
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作者名：空
| 作成日時：2013年4月15日 18時
