5人で生きてゆく…part11 (ページ42)

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542.【3】ページ42

［智にぃside］

俺の前では
「行っちゃやだ」
「だめ…」って泣いた和だけど
翔の前では黙りして泣くだけ…

自分の為に行ってくれると分かっているから
和も苦しいんだと思う…

翔「結局、何も話せてねーじゃん…」

研修を明日に控えた翔は
泣きながら寝てしまった和の頭を撫でながら
呟いた。

「いいんだよ、翔。和は分かってるもん。
大丈夫だよ。時間ある時さ、
電話してやってよ。励みになると思うから」

翔「うん、分かった。
また明日の朝、行く前に寄るから」

翔は和の頭を愛おしそうに撫でて
家に帰って行った。

翌朝…

雅「ほら、顔見せてあげなよ」

和「んー、ん、ん」

出発前に寄ってくれた翔を見ることもできず、
タオルを顔に押し付けて泣いている和。

翔「お土産買ってくるからな。
先生の言うこと聞いて、待っててね」

和「ん…ん、にぃ…」

翔「うん、ここにいるよ。行ってくるね」

伸ばされた手をしっかり握って
声を掛けてやった翔。

俺は和の耳元で声を掛ける。

和は、翔にどうしても言いたいって
言えなかったら助けてねって
俺に頼んでたから。

「翔、近くで聞いてやって？」

翔「ん？なーに？」

顔の近くまできてくれた翔に
和は一生懸命伝えた。

『おれの為にありがとう。
いってらっしゃい』

しゃっくり上げていたし、途切れ途切れに
なってしまったけど。

和の思いは翔にしっかり伝わった。

だって翔、泣きそうだもん。笑

翔「ありがと…かず。
頑張ってくるから、待っててね」

今度は翔の言葉に、しっかり頷いた和。

涙がポロポロ出てしまうけど、
翔に向かって小さく手を振った。

ドアが閉まったら雅紀が駆け寄って
抱きしめてやる。

和は声を出して泣いているけど、
どこかスッキリした表情をしている気がした…

雅「…寝ちゃったね」

「昨日の夜も、あんまりゆっくり
寝れなかったみたいだからさ」

雅「そっか。でも、よかった…
何とかなりそうだね」

そう言って和の頭を撫でてやる雅紀は
優しいお兄ちゃんの顔をしている。

きっと翔が居ない間も、この優しさに
俺らは助けられるんだろーなって思った…

和「ねぇ、智にぃ。翔にぃからメールきた？」

昼食の時に起こされた和は、
それからずっと機嫌がいい。

俺が「きたよ～」ってメールを見せると
「ほんとだ！」って嬉しそうに笑う。

先「和く～ん、熱計ろっか」

和「はーい。ねぇ、先生。
翔にぃからメールきたの。見て？」

嬉しそうな和を見て
先生も嬉しそうに笑った。