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［智にぃside］
「入ってくんな！」って
言われたから、しばらく
落ち着くのを待とうと思って
談話室に向かってゆっくりと歩いていた俺ら…
点滴スタンドが倒れる音がして
ドアの前に戻ったら、和が飛び出してきた。
床に座り込んで押さえ込むけど、
バタバタ暴れて泣いて…
もう手が付けられない。
だけど、翔が鎮静剤を持ってきて
打とうとしたら「やだ！しょ、にぃ、
くすりはやだ！」って叫んだんだ…
俺らのこと認識してるなら
何とかなるかもしれない。
翔もそう思ったらしくて
和に声を掛けた。
翔「かず、薬なくても話し聞ける？」
和は俺の腕の中でもがきながら
「きけるー」「きくー」って叫んでる。
翔「落ち着けるの？」
和「きくー、きけるー、ちゃんとするー」
この様子じゃ落ち着けそうにない…
でも、翔は注射器を机の上に置いて
和の前にしゃがみ込んだ。
翔「今は、聞けてないよ？」
和「きくー、きけるからー」
喋ってるのに上からかぶせるように
叫んでくる和。
翔は和の顔を両手で包み込んで
目をバッチリ捉えた。
翔「聞けてないよ？聞けてない。」
和「…」
目を無理やり合わされた和は
じっと翔の顔を見ている。
翔「今の和は聞けてない。」
和「…」
翔「聞けるのね？」
和「ん…」
小さく声をもらして、振り返って俺を見た和は
暴れるのをやめて、しがみ付いて大声で
泣き出した。
「ごめんね、一人にして。
苦しくなって辛くなるから、泣かないで。」
俺は背中をさすりながら、耳元で何度も
声を掛けた。
和は俺にピッタリくっついて早い呼吸を
繰り返してる…
翔「ちょっとごめんね？」
少しだけ落ち着いた和の背中に
聴診器をあてていく翔。
翔は「寝たら薬入れたいから。寝せちゃって
くれる？」って小さく呟いて
注射器を持って病室を出て行った。
「ずっと居るから。おやすみ、かず」
ウトウトし出した和の背中をポンポンと
叩いているとスーッと眠ってくれた…
ベッドに寝かせてタオルで顔を拭いてやる。
翔「寝れたね。ありがと、智にぃ。
点滴入れ直しちゃうね」
翔は抜いてしまった点滴を片付けて
傷口も手当てしてやった。
翔「また抜くかもしれないから。
今回は手の甲に刺して固定するね。」
俺は和の隣に寝転んで、自分の方に
体をギュッと寄せた。
翔「かずー、右手ちょうだいね」
スースー寝息を立てている和に
優しく話し掛けながら処置を進めていく翔は
やっぱり頼もしい。
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作者名：空
| 作成日時：2013年3月24日 11時
