27.【4】 ページ27
［翔side］
「忙しいんだから、
そんな毎日来てくれなくて
いいって…」
感謝の気持ちを上手く表現できないし、
辛い気持ちをぶつける相手がいないから…
イライラの矛先は母さんに向けられる。
今日も思うように体を動かせないことに
イライラして八つ当たりしてしまって…
母さんは「忙しくないよ〜」って笑いながら
着替えを置いて病室を出ていった。
双子もいなくなってガランとした病室に
取り残されて罪悪感でいっぱい。
そんな時に先生は決まって来てくれるんだ…
「調子どうだ〜？」ってね。
医「しょーくん？調子どうだ〜？」
ほらね？笑
お医者さんって、もっと事務的なものだと
思っていたから構ってくれる先生のことを
俺は好きになった。
医「な〜に、暗い顔してんの〜？笑」
「だって…」
医「大丈夫だって。お母さんは全部、
分かってくれてるから。」
「え…」
先生はこうやって俺の気持ちを分かって
くれてる。
医「親なんてさ、子どもの八つ当たりくらい
可愛いもんだって思ってるから。な？」
「…」
そうなのかな…
いっぱい迷惑掛けて、心配掛けてるのに
さらにイライラをぶつけて。
そんなんでも母さんは分かってくれてるの？
医「だいじょーぶ。」
「…」
不安だった気持ちがスーッとラクになる。
医「夕方になったら、リハビリ室見にいって
みようか。」
コクンって頷いたら「退院してからだけど、
通うことになる場所だから」って。
いつまでも学校に行けなくてイライラも
募ってるから、回復に近付く気がして嬉しい。
医「翔くーん？行こうか」
夕方になって約束通り迎えに来てくれた先生に
連れられてリハビリ室に。
医「あっ、いたよ〜？」
先生は俺の担当になるリハビリ師さんを
紹介してくれた。
リ「よろしくね〜。ゆっくり見学してってね」
口に出したことなかったけど…
「リハビリってどんなことするんだろう…」
「厳しいリハビリ師さんだったら
どうしよう…」
「痛いのかな…」
って内心ドキドキしてたから。笑
事前に知れてちょっと安心。
俺のそんな気持ちを汲み取って、連れてきて
くれたんじゃないかなって思って
先を歩く先生を追いかける。
「咲ちゃーん、すごい歩けるように
なったね〜。えらいな〜」
「樹くん、こんにちは！」
担当した患者さん、一人ひとりに
丁寧に接していく先生の背中はカッコ良くて。
退院する時に、手紙を書いたんだ…
『俺、大人になったら先生みたいに
なりたいです』ってね。
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作者名：空
| 作成日時：2013年10月5日 20時
