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［智にぃside］
病室でみんなで笑っても
和だけは笑わない。
俺らだけの時は、もちろん笑えるように
なってるんだけどね。
担当医、カウンセラーの問い掛けにも
応えようとしない…
さすがに失礼だと思って一度だけ、
無視を続ける和を叱ったことがあった。
「返事くらいできるだろ？」って…
でも和は震えながら言ったんだ。
厳しく叱っている俺の目を
真っ直ぐに見つめて…
「聞こえない…」って。
もちろん耳は聴こえてる。
だけど、拒否状態にあるから頭に入って
こないのだろう…
それを聞いて、俺は反省した。
和は故意で無視してるわけじゃないんだって、
分かってるつもりだったのに…
一番苦しんでるであろう和を
俺は責めてしまったんだから。
そんな時でも和は「ごめんね」って
謝った俺を見て、何度も首を振って
「智にぃ、すき」って言ってくれて…
いつになったら、和を救い出して
やれるんだろう…って悩んでたけど。
今の和が望んでるのは、そんなことより
信じてる俺らに寄り添ってもらうことなんじゃ
ないかって…
何があっても信じられる存在で
いることなんじゃかって…
思ったんだ。
だから俺らは和の傍にいて、
信頼できる大人もいることを
伝え続る事にした。
カ「かずくん、こんにちは」
和「…」
今日も迎えに来てくれたカウンセラーを
完全拒否。
体に力を入れて、ガチガチに緊張してる…
翔「かず、降りといで？」
翔の言葉にフルフルと首を振って拒む…
翔「一人にしたりしないから」
「かず、首とれちゃうよ？」
あまりにも首を振って拒むから
俺は心配になって、車に戻って抱きしめた。
和はすぐに小さな手で必死になって、
俺にしがみ付いてくる…
和「…りたい、…こわい…」
こいつを、こんなにも苦しめているのは
いったい何なんだろう…
「あのね、俺ね…」って誰にでも無邪気に
笑顔で懐いていった和を返して欲しい…
俺らの失敗を和が背負わなきゃいけないのは
おかしいだろ…
和「…にぃ、…かないで…？」
和の弱々しい声がして顔を上げたら
自分が泣いていたことに気が付いた。
和「…さと、にぃも…つらい、の…？」
「…」
心配そうな顔で真っ直ぐに俺を見てくる和に
返す言葉が見つからない。
カウンセラーに「和くんの前では
揺るがない存在でいて下さい」って
言われたのに…
何やってんだ俺…
カ「違うよ、和くん。お兄さんはね、
和くんのことが大事だから泣いてるんだ…」
和「…俺も、だいじ…」
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作者名：空
| 作成日時：2013年4月5日 8時
