1726.【5】 ページ26
［潤side］
翔「押される感じ
するからな…？」
和「ん…んぅ…」
翔「かず…我慢してね…動かないよ？」
痛みで和の足がモゾモゾって動いて…
翔にぃはそれをやんわりと注意しながら
検査を進める。
初めて見る光景。
翔にぃが、他の患者さんの検査をしているのを
見ているみたいな、そんな感覚に陥るけど…
和「…っ、んぅー…」
和の口から漏れる苦痛の声で現実に引き戻された。
雅にぃが腕を掴んでるから、俺は左手を握ってる
んだけど、握り返す手にどんどん力が
入ってくるのが分かる。
手汗もかいてきたし、かなり痛むみたい…
翔「もう少しな？がんばれ…」
和「…っ、んぅ…」
翔「…」
和「んぅー…」
翔「よし、おわり。頑張ったな…」
太い針が抜かれて、その部位にガーゼが
当てられる。
しばらくギューッと押さえて止血されて…
和はクタッとしていたけど、少し経って顔を
動かしながら涙をサッと拭って「…んふ、やっぱり
涙出ちゃった。笑」って小さく笑う。
翔「よく頑張ったよ…涙はね、痛みで生理的に
出るもんなの。えらかった、偉かった。笑」
和「んふふ…」
翔にぃが「気にすんな」って意味も込めて
ワシャワシャって頭を撫でたら笑ってる。
気が付いたら俺自身も笑ってて…
あれ…『検査の後なのにな』って。
［雅にぃside］
その後も…
検査を終えた時、それから処置の後なんかにも
俺らは何度も、突端恐怖症でない和に
プラスの思いを感じる様になった。
そのことについて、俺らは何度も話をして
『記憶が戻って、また突端恐怖症で苦しむなら
このままの方が良いんじゃないか…』って
話までしたんだ。
だって今の和の方が遥かに、笑ってる回数が
多いんだもん。
昔の写真を見ながら「俺、こんなバカなこと
してんの〜？笑」って恥ずかしがったり、
「すげ〜、幸せそうじゃん」って喜んだり。
こんなんだったらさ『今のままでも、時期に
また家族に戻れるよ』って俺はそう思うように
なって。
ほんとはね、突端恐怖症で苦しんで泣き叫んで
パニックになる和をまた見るのが嫌なだけ。
そんな和を目の前にして、何もしてやれない自分が
嫌だから、そこから逃げたいだけ。
結局…自分の気持ち。
その方が『和もラクだから…』なんて、ただの
綺麗ごとで、全部自分のラクな道。
記憶を失った和が苦しんでることも知らずに…
強がって笑ってるって分かってやろうともせずに…
俺は結局、また逃げた。
全てを和に押し付けて…
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作者名：空
| 作成日時：2014年12月2日 18時
