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「教えられてきた…？」
「私ね、物心ついた時から両親がいなくてリライズに拾われて育てられてきたの。そこで戦いのあれこれとか色々教わった感じ」
「兄弟とかもいないの？」
「うーんいるのかもしれないけど会ったことない！というか会っても分からない！」
あっけらかんと彼女が言う。
表情にさえ出していないが、天涯孤独というのは寂しいよなと少し思った。
「それで、育ててくれた人達とか先輩とかに、どうせ記憶も消しちゃうし知られたら怖がられるから黙っとくといいよって言われてきたんだ。だから仲良くなりたいなんて言われたの初めて」
…！
その時、今まで見たことがなかったような表情で笑んだ彼女にドクンと心臓が鳴る。
花がほころぶような優しい笑みから目が離せなかった。
こいつ、こんな風に笑うんだな。
「なぁ」
その表情を見ながら声をかける。
「じゃあ、その、友だちとかもいねぇの…？」
「いないよ。友だちなんて必要ない。情を移すとろくな事がないって教わってるし」
「寂しいこと言うなぁ…」
壮真がそう呟く。
彼女の表情も一瞬でヒヤリとしたものに変わってしまっていた。
「じゃあ、僕と秀樹さんがAちゃんの友だち第1号になろうかな」
「え？」
「は？」
彼女と二人で素っ頓狂な声を上げ、壮真の方を見る。
そこには、にこにこ顔の壮真がいた。
「Aちゃんの世界はそのリライズの先輩たちから教わったことでできてると思うんだよね。でも多分、世の中には君の知らないことがまだ沢山あるよ」
「たとえば…？」
「そうたとえば、野球の楽しさとか」
そう言いながら壮真が素振りの真似をする。
「あそっか、野球選手なんだっけ」
「そうだけど、Aちゃんには野球選手とかそういうのはとっぱらって接してほしいなって。せっかく歳も近いんだし？ね、秀樹さん」
「お、おう…？」
急に振られて、曖昧な返事を返す。
でも。
「でも、その、なんつーか、球団で本当に働くんだったら、これから先も仲良くして欲しいっつーか…うん」
「もう秀樹さんは素直じゃないな」
「ふふっ、ありがとう。そう言ってもらえて嬉しい。じゃあ、改めてよろしくね」
再び彼女が笑顔になり、手を差し出す。
その手を取ろうか迷っていると、壮真が彼女と握手をした。
「あっおい壮真…！」
「なんですか？」
「〜〜〜〜〜！」
「…？」
俺の表情で察したのか壮真がニヤニヤと笑う。
よくできた後輩だよ、ほんとに。
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作者名：麗華 | 作成日時：2024年2月14日 4時
