検索窓
今日:52 hit、昨日:21 hit、合計:4,038 hit

ページ3

 
 
 
 
 
「いい表情、ムーンローズのその顔、僕大好き」

ギークと呼ばれた男がこちらをまっすぐ見つめて笑いながらそう言った。

「まっ久々に君と遊べて楽しかったよ。また会おう、僕の愛しのムーンローズ」

そう言うと、男はマントを翻して闇夜に消えた。


「はぁ…気持ち悪い」

彼女が大きくため息をつく。
俺を抱えたまま。


俺、いつ解放されるの…?

「な、なぁ」

おそるおそる彼女に声を掛ける。

「えっ?」

すると、瞳をまんまるにした彼女と目が合った。

「そろそろ降ろしてほしいんだけど…」
「あっ!ごめんごめん!今降ろすね」

そう言うと、彼女はゆっくり降下し、すとんと球場に足をつく。

「秀樹さん!大丈夫でしたか…!」

降ろされた俺の方に、壮真が走り寄ってくる。


「大丈夫大丈夫。壮真は?怪我無い?」
「俺は大丈夫です。よかった…秀樹さんに何かあったらどうしようかと…」


そう言いながら、壮真が胸をなでおろす。
その様子を見て、彼女が口を開いた。

「ごめん、怖かったよね」
「や、うーんちょっと驚いただけっつーか…てか」
「うん?」
「聞きたいことが山ほどあるんだけど」

そう前のめりになると、向こうから哲人さんや宗さんがやって来る。

「秀樹〜!大丈夫やったん?」
「お前、お姫様抱っこされてなかった?」
「それはもう、見なかったことに…」


俺に群がる哲人さんや宗さんを横目に、彼女が一歩後ずさる。

「待って」

俺はその手を掴んでいた。

「!!」
「だから聞きたいことあるんだってば」

腕を掴まれ、びくっと反応する彼女に思わず驚く。先程まで俺を抱えていた人と同一人物だとは思えなかった。

「そういえば!キミもすごかったな〜あれどうやってやったん?」

興味津々と言ったように哲人さんが彼女の方を見る。


「内緒です。でもみんなにけがが無くてよかった」

彼女は人差し指をそう口元にあて、ニヤリと笑った。

「それじゃ、私はこれで。明日以降の試合も頑張ってください」

彼女は再びマントを翻すと、強く地面を蹴って飛び上がる。

そのまま闇夜に消えて行ってしまった。



「なんやったんやろな〜今の」
「不思議なこともあるもんですね」

そう、哲人さんと宗さんが呟く。
俺はその呟きを耳に入れながら彼女が消えていった方を見つめる。

この不思議な夜が、俺と、この話のヒーロー、じゃなくて、ヒロイン、Aとの出会いだった。
 
 
 
 
 

4→←2



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (12 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
35人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:麗華 | 作成日時:2024年2月14日 4時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。