楽屋 ページ45
｢………………っ、………｣
鈍い吐き気で目が覚めると、
目の前にはボヤっと白い天井。
…………あれ、私車に………
｢うぅ…………｣
ていうか気持ち悪い………
目の前がグルグルする…………
｢気持ち悪い？吐きそう？｣
｢あっ、………｣
なんとなく一人だと思い込んでた空間から声がして、慌てて口を閉ざした。
櫻井さんの声……？
｢だいじょぶです、……あの、ここは｣
｢寝てていいから｣
無理やり起こそうとした身体はどこからか伸びてきた手によってもう一度横にさせられる。
目を向けると、ソファの背もたれ側に立つ櫻井さんの心配そうな顔。
｢ここ俺らの楽屋。
車から降ろしても起きないからつれてきた｣
平気なの？という声に答えるより前に、
やっちゃった…………って気持ちの方がまさって
…………同じ楽屋、
だめだそんなの…………
それに櫻井さんは私のこと………
｢…………わたし、別のへやに、っ……｣
いまだに回る視界の中でもはやうかされるように呟いた私の声は、
はぁ…………
櫻井さんの深いため息にかきけされた。
…………呆れてる？
鬱陶しいと思ってる？
胸がちぎれそうに痛む
｢………………お前さ、｣
小さく紡がれるその続きを聞きたくなかった
どうしよう
大事な日なのに
私今すごく重荷になってる
──────聞きたくない
｢っ、ほんとすみませ、………！｣
身体を押さえている手を払って無理やり起き上がって抜け出そうとした私の身体は
｢…………………ばかじゃないの｣
いつの間にかこっちに回ってきた櫻井さんの胸の中。
｢……………んぇ、さくらいさ、ん…………｣
押し返していいのかわからなくて
謝るべきなのかもわからなくなって
｢いいから｣
耳元で聞こえる低い声にただ身体を預ける。
｢お前はもう嵐なわけ｣
逃げたかったはずの言葉は心地のいい声に乗せられて私に染み込んでいく。
｢………そんなに一人で抱え込むなよ｣
切ないその響きに思わず高鳴る胸。
｢辛いなら寄りかかれよ
苦しいって叫べよ
………俺の前で泣けよ｣
｢っ、……………｣
あんなに泣かないと決めていた涙が溢れて
そんな私の嗚咽すらも抱き締めるその腕が優しいけど苦しくて
───俺の前でだけさ
小さく聞こえた声は幻聴だったかもしれない。
そんなことどっちでもよくなるくらいに私はただ身体を預けた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 641人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みか - 大丈夫ですよー！めっちゃ面白い！ (2019年7月18日 22時) (
レス) id: 5656ab29cf (このIDを非表示/違反報告)
hiro(プロフ) - 美来さん» お返事遅くなりすみません(T△T)！あああ、楽しみにしてくださってるのに亀更新で申し訳ないです(T△T)(T△T)見捨てないで……(T△T) (2019年7月18日 21時) (レス) id: fea287eb7e (このIDを非表示/違反報告)
hiro(プロフ) - みかさん» お返事遅くなりすみません(T△T)！励みになります……がんばります！ (2019年7月18日 21時) (レス) id: fea287eb7e (このIDを非表示/違反報告)
美来(プロフ) - いつも読ませていただいてます！毎日の更新を楽しみに、その日1日生きてます！笑 応援しています、頑張ってください\( ´ω` )/ (2019年7月14日 1時) (レス) id: 2e446e9c80 (このIDを非表示/違反報告)
みか - わかりやすくて楽しい！ (2019年7月12日 18時) (レス) id: 5656ab29cf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：hiro
| 作成日時：2019年7月6日 10時
