恋心は鎧で武装して。[進撃の巨人] (ページ6)

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エピソード3 後編ページ6

ライナーの予想は当たっていた。
ルーはそんな孤児院に帰りたくなかったのだ。
だから彼の"うちへこいよ"という言葉に素直に従って大人しくついてきたのである。

しかし、ついてきた事にこの後ルーは後悔した。

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「おかえり、ライナー。今日の訓練はどうだった？」

「頑張った…けど……。でももっと頑張って絶対に戦士になるから！！」

ライナーの成績が良くない事を同期であるルーは知っていた。
マルセルの弟であるポルコに"ドベ"だと馬鹿にされる事が多いくらいに、彼には特筆する才能がなかった。

「あぁ、そうだよ。戦士になれば認められてきっと父さんもお前を誇りに思ってくれる」

ルーにはいない親が、温かく子供を迎えてくれる光景。
彼女とは違う戦士になりたい理由。
そしてライナーの母親のこの言葉と、彼女の瞳の奥にある真意がここに来て後悔した一番の理由だった。

"この母親は息子を利用している"

そう確信した時、吐き気がした。

「そうだ母さん、こいつ俺の同期でルイジアナって言うんだ！えっと、ちょっと訳があって…夕飯まで家にいてもいいかな？ほら、早く入れよ」

思い出した様に、入れと言われても扉を開けたまま立ち尽くし入って来ないルーを母親に紹介する。
それでやっと母親はルーを認識した。

「それはいいけど、家族の人は心配しないのかい？」

「やっぱり帰る」

「え…？あっ！おい！！」

ライナーの静止を聞かず走りだす。友達もおらず、孤児院にも帰りたくはないルーには他に行くアテはないが、とにかく早くあの家から、あの母親から離れたかったのだ。
まだライナーには手首の手当のお礼も言えていないのに。

「くそっ！マーレもエルディアも変わらない！！悪魔はお前たち大人だ！！」

ルーはこの世に失望していた。生きる希望など何もないと…。
彼女は早く死にたかった。この世から存在を消し去りたかった。
誰かが言っていた気がする。"贅沢な自殺"だと。
そのために戦士を目指していた。

「…アンタは優しいよ、ライナー。こんな私に気づいてくれた…」

暗くなり、街灯が照らす中立ちすくむ。

「こんな私に、気づいてくれてありがとう…」

本当は手当をし、怒ってくれたライナーに言いたかった言葉だった。言いたかったのに言えなかった言葉。

「でも、ごめん。優しいから、アンタを戦士になんかさせたくない…」

道の真ん中でうずくまり、道行く人の視線も気にせず声を殺して泣いた。