君色の世界【二口堅治】

０３茜色に想いを隠す。 ページ3

.









俺は馬鹿だから、好きな子にどんな態度とりゃいいかなんて、分かりもしなくて。

お前が無邪気に差し出す手を、ただ仏頂面で握ることしかできなかった。









『けーんーじーくん！あーそーぼっ！！』

「‥‥おう」









幼少期の俺にいろんなことを教えてくれたのは、全部Aだった。

何も知らない、ひとりぼっちの俺に。






友達の作り方。

公園での遊び方。

近所の猛犬の対処法。

猫の溜まり場。

カブトムシのとり方。

夕日が綺麗に見える場所。







いつだってお前は、笑顔で俺の手を引いて。

俺にいろんなことを教えてくれて。









『けんじくんには、もっともっともーっと！！

いろんなこと教えてあげたいの。

だって、けんじくんは私の【友達】だもん！！』









あのときは、それで十分だと思ったよ。

友達としてでいい。

弟のような存在でもいい。

お前の隣にいつだって居られたら、それでよかったんだ。









『あ、見てけんじくん！！

お空が真っ赤っかだよ。‥‥綺麗だねぇ』

「‥‥うん、綺麗だな」









茜色に染まる空。

俺とお前だけがいるこの場所。





ふたりして真っ赤だね、って笑った秋の夕方。









幼い俺は単純に、それだけで幸せだと思えてたんだ。









【いつだって君が笑ってて】

【僕がその隣にいること】





【それだけで、僕は幸せだと思ったんだ】





.

０４鈍色の嘘を、想いに重ねる。→←０２胸を焦がした桜色。

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す