夜明けの唄【赤井秀一】

１０心の底から愛していたの ページ11

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突然、ピタリと動きを止めたAを後ろから抱きすくめた。

そのまま後ろに倒れこむようにして引っ張る。

赤井は、なにも言わずに強く抱きしめた。









「‥‥」

『‥‥‥た』

「‥‥？」









『私、死ねなかった‥‥』









途端に、その瞳から大粒の涙が溢れ出す。

赤井は、驚いたような表情でそれを見つめていた。









『全部終わって、陣平に会いにいくつもりだった。

ちゃんと‥‥ちゃんと全部やり遂げたよって、言いにいくつもりだった。





未練なんてなかったの。

彼だけを愛していたから。






‥‥なのに、死のうって、思ったら』









『赤井秀一。‥‥貴方の顔が浮かんだ』









‥‥あぁ、自分は今、どんな顔をしているのだろうか。

もしそれが分かるのなら、俺はきっと情けなく笑っているんだろう。









『貴方の声が聞こえた。

いくなって言われた気がした。





‥‥それを聞いて、【死にたくない】って、思ってしまった』









どうして、どうして。

私が愛していたのは彼だけなのに。





彼だけを想って死のうって決めてたのに。









『ごめん‥‥陣平‥‥！！』









引き攣ったような泣き声を漏らすA。

そんな彼女を、赤井は。









「‥‥俺の話を、聞いてくれるか」









そっと抱き寄せて、耳元でそう囁いた。









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【どうか、どうか聞いてほしい】

【ちっぽけで情けない、君を想う男の話を】




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