【最終兵器俺達】涙色の空の下で君と出逢った僕は。【ヒラ】 (ページ22)

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▼最終話△ ページ22

『ヒラ、くん？』

不安そうにこちらを見下げるAちゃん。

俺は彼女を見上げてから、また前髪をくしゃっと掴んで1つ、ため息をついて、また彼女を見上げてそっとつぶやいた。

《初めて見た時から、涼宮さんが好きでした。フジより、幸せにします。だから、俺と付き合ってくれませんか？？》

さっきよりも大きくなるざわめき、どよめき。

勘違いしないでいただきたい。まだ体育祭は終わってない。午後競技の途中であることを、忘れないで欲しい。

つまり、観覧者も沢山いるわけで、かなり注目の的だ。結論。

帰りたい。

今すぐにでもここから逃げ出したいし、家に帰りたい。そしてあわよくば穴を掘って埋まりたい。

『あ、の。えと、本当に優くんのこと、忘れさせてくれますか』

「必ずって約束できない。忘れさせるっていうより、思い出にしてもらう。で、俺がその思い出を超えてみせる」

俺が真っ直ぐにAちゃんを見つめていえば、Aちゃんは涙が溜まった瞳のまま、ニッコリと笑ってくれた。

『期待、します。これから、よろしくお願いします』

手を繋いだまま、ぺこりとお辞儀をするAちゃん。

マイクをレトさんに渡してから、少し勢いをつけて立ち上がり、繋いだ手を引っ張って彼女を抱きしめた。

「…大好き」

『知ってる。それに、私もう随分前からヒラくんのこと、好きだったよ』

耳元で囁かれる、小さな事実。
俺の頭の回路を止めるには充分な威力があった。

「え…」

ふわっと、爽やかな香りが香ったと思うと、唇に柔らかい感触。

『溺愛、させます。覚悟しといてね？』

ニッコリと微笑んだ、天使のような少女は小悪魔な言葉を告げてから、友達の輪に戻っていった。

もう一度言わせてもらうけど。

まだ体育祭は終わってないのに。

俺もクラスの場所に戻れば、クラスのみんなに冷やかされる始末。

それに次の競技なかなか始まらないし。
本とさっさと進めて欲しいのだけれど。

「幸せそうな顔しやがって!!」

こんな体育祭も、悪くないかもしれない。

やっと始まった競技を見ながら、空を見上げた。

雨上がりのあの日の空よりも、ずっとずっと鮮やかな青。

雲一つない晴天で、青と白のグラデーションがとても綺麗。

そんな風に思えるようになったのも、彼女のおかげかもしれない。

絶対幸せにしてみせる。

太陽にそう誓って。

～fin～