05.他人の温もり ページ6
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倉庫の中で、ごみと一緒に横たわっていたソイツ。
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『……ま、ま？』
…もし、あの女と男が朝まで帰って来ないんならコイツは多分今日の夜、ここで死ぬ。
「………」
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俺は何も言わずその女の子に自分の着ていた上着とマフラーを掛けると、体を支えながら自分の家へと連れて帰った。
その日は幸い、親は不在だった。妹の千咒を連れて飯でも食べに行ったんだろう。
武臣はいつも通り家に居ない。
俺は体の冷え切ったソイツを風呂に入れ、自分の服を着させた。
体が温まり落ち着くと意識もはっきりしてきたようで、そんな様子に酷く安心した。
見つけたときは、本当に死ぬ寸前なんじゃないかって程に弱り切っていたんだ。
「…体、痛いか？」
俺よりも２周りほど小さい背中を優しくさする。
俺にも他人に対してこんな風に接することのできる心があったんだ。
ソイツはゆっくりと顔を上げると、俺の目線の少し下を見つめた。
…？どこ見てるんだ？
不思議に思っていると、小さな手がそっと俺の顔に伸びて来て、唇の端辺りに触れた。
『…お兄ちゃんの方が、痛そう。』
あぁ、この口の傷か。
「お前と同じ理由だよ。俺が女じゃねーのが気に入らないみたいで切り付けられたんだよ。笑えるだろ？」
『…痛かったね。』
笑い飛ばした俺だったが、帰って来た返事が思いもよらぬ言葉で
柄にもなく涙を流してしまった。
年下の女の子に頭を撫でられ
『痛いね。』と、二人で涙を流した。
その夜、俺たちは一つ布団に二人で身を寄せ合った。誰かと一緒に眠るなんて、初めてのことだった。
「…ん、眠れねーか？」
『……うん。』
ここは一応部屋と言っても、暖房すら付いていない納戸。
布団だって薄っぺらい毛布が一枚だけ。いくら抱きしめ合っていても眠れないのも無理はない。
「ちょっと待ってろ」
俺は一言そう言って部屋を出た。
俺の家には親の趣味でたくさんのカセットテープがある。おれはその中から一つのカセットテープを無作為に取って部屋へ戻った。
『…お兄ちゃん？』
「寒いから布団に入ってろ」
カセットプレーヤーにテープをセットし重いボタンを強く押すと、静かな部屋に音楽が鳴りだした。
その曲は、昔流行った”ガンダーラ”という歌だった。
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りお - とっても刺さる素敵な作品でした(;o;)春千夜にも夢主にもガンダーラで幸せになってもらいたいと思いましたT^T (2021年10月31日 1時) (
レス) @page17 id: fffe7db0be (このIDを非表示/違反報告)
れいん(プロフ) - 寝る前に読んでみたら 一つ一つの言葉が凄く刺さって 涙出ました (2021年10月31日 0時) (レス) @page16 id: 817f921072 (このIDを非表示/違反報告)
Ibibubu(プロフ) - 本当に作者様の書いた作品が凄く好きで、素敵な作品をありがとうございます (2021年10月29日 23時) (レス) @page18 id: 9aefec9a34 (このIDを非表示/違反報告)
りぃ - すごいな、これ… (2021年10月29日 1時) (レス) @page18 id: 0e789b8f74 (このIDを非表示/違反報告)
不夜城・レイス(プロフ) - 一行一行が凄い感動しました(泣) これからも応援してます！ (2021年10月28日 19時) (レス) @page12 id: 23f9dcf647 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：平
| 作成日時：2021年10月24日 21時
