自身と鏡と、そして____ ページ3
自分はなんでここにいるのだろう。
総悟さんという青年に連れられてここにたどり着いてしまったが、もうどうでもいい。
もう何を言われようが、されようが、どうだっていい。
風呂から上がればまた追い出されるのだろう。
そんなことを考えながら、ふと鏡に目をやる。
そこには、お世辞にもきれいとは言えない傷だらけの身体が映っていた。だが、少女にとっては見慣れた光景であったため、そのまま風呂から上がろうとした。上がろうとしたのだ。だが、それは叶わなかった。
イト___________。
そう、そこには、自身の身体と、イトが映っていたのだった。イトは、バラバラで赤黒く汚い色をしており、切り口は雑に引き千切られたようになっていた。そして、少女の身体の周りをフワフワと漂っていた。
少女の目が見開かれ、いつもの無表情が崩れた。
汚れかと思い、鏡に手を伸ばしてみるが、糸の感触などない。
まさかと思い、周りを確認するが、イトなど見えなかった。
横にズレてみる。
イトも一緒に付いてくる。
手で払ってみる。
変わらずイトはそこにあった。
ハア……
少女はため息をついた。そして、またいつもの無表情へと戻った。
自分のことになど興味もないのか、考えるのが面倒くさくなってしまったのか、はたまたその両方か。
そして、少女は今度こそ風呂場を後にしたのだった。
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作者名:*kuro* | 作成日時:2019年6月9日 23時