子猫と勘違いして人間拾って来てしまった水柱さんの話。

三匹 ページ3

翌日、クロが目覚めたとの連絡があり、蝶屋敷へと向かった。
クロは随分と胡蝶に懐いていた。

「はい、Aさん、口を開けてください？」


A…？それがクロの名前なのだろうか。

クロは胡蝶から食事を食べさせてもらい、満足そうに口をもぐもぐしている。

「クロ…」

俺が近付くと、胡蝶に抱きついた。
照れているのだろうか。


「冨岡さんは少し離れていてください」
「俺は嫌われてない」
「分かりましたから」

その時、聞きなれた声がして振り向けば、不死川が居た。

「よォ、元気になったかチビ助」

不死川がクロに話しかけると、クロは何度も頷いた。

「そうかァ、いっぱい食べて早く元気になれよォ」


頭を撫でている。不死川が。
いつの間に仲良くなったのだろう。


「クロ」
「冨岡さん、クロではなく、Aです。そうですよね？」

胡蝶が聞けば、Aは何度も頷いた。


「…A」

そう呼べば、Aは痩せていてまだ少し顔色は悪いが、嬉しそうに頷いた。



心の底で、何かがきゅんっ、と音を立てたような気がした。


「A」

名前を呼べば大きな黒い瞳がこちらを見る。

「A」

コテンと首を傾げるA。

「…冨岡さん、いくらAだけが反応してくれるからと言って、名前を連呼するのはやめてください。もう面会時間は終わりですよ」



胡蝶に無理矢理追い出された。

「冨岡ァ、チビ助を育てて、困った事があれば相談しろ」
「……あぁ」


不死川はそう言ってすぐにいなくなった。

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