Last Story ページ50
「Aちゃん？大丈夫？帰ってきて〜！」
恥ずかしさで赤くなった私を心配した隼くんに、思い切りガシガシ揺らされてふらふらになったけど……
照れ隠しにはちょうど良かったかも。
「あなたにも……いつか王子さまが現れるわよ…？」
急に、頭の中でお母さんの声が聞こえた気がした。
そうだ……
あの……事故の日。
バスを待ちながら、自由過ぎるお父さんの話をしたんだっけ……。
『お父さんみたいな自由人のどこが良かったの？』
そう聞いた私に、お母さんは笑顔になって………
「お母さんには、お父さんが王子さまだったのよ？」
って言ったんだ……。
「Aには、Aにピッタリの王子さまがいるはずだから……
会える時まで自分をみがいて、待ってるのよ？」
って………。
『ホントに現れるのかなぁ〜』なんて笑いながら流したこと……今の今まで忘れてた。
ずっと……心に鍵をかけて、思い出さないようにしてたのかも……
悲しい思い出ばかりじゃなかったのに……
楽しい事もたくさんあったのに……。
きっと、涼太くんに出会えて、優しさをくれて…愛してくれて……
いろんな鍵を開けてくれたんだ。
お母さん？
私の王子さま、いたよ？
これ以上ないくらい、最高で最上な王子さまに出会えたよ………。
王子さまは、ステキな仲間にも会わせてくれたよ。
優しく微笑む涼太くんと、おひさまみたいな笑顔の隼くん。
そして、お兄ちゃんよりお兄ちゃんらしい世界くんも、元気でにぎやかなジェネさん達も……
みんなみんな私の宝物。
みんなで何度目がわからない乾杯をした後、涼太くんの手を握ると、「ん？」って私の顔を覗き込んだ。
『私と…出会ってくれてありがと』
こっそり囁くように伝えると、一瞬目を丸くした後で笑顔になり、指を絡める。
「俺こそ……ありがと」
神様なんて……正直、いるのかいないのか、よくわかんないけど……
もし、いたとして、過去に戻れるなら、過去の私に言ってあげたい。
今は苦しくても、前を向いて歩いていたらいいことあるよって。
そのまま歯を食いしばって頑張ってたら、ご褒美なんて言葉じゃ片付けられないくらいの出会いがあるよって………。
あなたにもステキな王子さまが現れるよって。
……いつか王子さまが………
おしまい
終わり
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作者名：ひな | 作成日時：2023年7月2日 17時
