守られることになりました。【な組】

【第28話】 ページ31

田「……大丈夫ですか？」

「っ！」

驚いて、ばっ、と後ろを振り返ると、そこには田中さんが立っていた。

田中さんは、心配そうな表情で私のことを見つめていた。

「なん、で……」

なんで田中さんが？田中さんは私を送ってすぐ帰ったんじゃ。

私の中でそんな疑問が渦巻いた。

田「……Aさんが車を降りた後、何か不安そうな表情をして足をすくませていたので、放っておけなくなりまして。」

田中さんはそう言って、優しそうに笑った。

田「しばらく様子を見て何も無ければ帰ろうと思ったのですが、女性の怒鳴るような声が聞こえたので。」

なんて優しい人なんだろう、と思った。

親戚のおばさんみたいな薄情な人もいるのに、こんなに優しい人も同じ世界に存在しているのだから不思議なものだ。

「……家を、追い出され、まして。」

なんだかそう告げるのも恥ずかしくて、言葉が詰まってしまったけれど、田中さんはちゃんと聞き取ってくれたらしく。

田「車が近くのコンビニの駐車場に停めてありますので……な組のアジトまで行きましょうか。」

と言って、私に手を差し伸べてくれた。

「で、でも、迷惑じゃ……」

田「とんでもない。Aさんを守るのがな組の皆さんの使命でもありますし、皆さんAさんの事を気に入っている様子でしたので、きっと大丈夫ですよ。」

それに、他に行く宛もないでしょう。と田中さんは笑うと、いつまでも重ならない私の手を取り、軽く引っ張った。

「あ、ありがとう、ございます……。」

とてつもなく申し訳ない気持ちになったけれど、確かに他に行く宛もない。

私は田中さんに引っ張られるがまま、コンビニの駐車場まで行き、再びその車に乗り、な組の家にお邪魔することになったのだった。

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