【プロローグ1】 ページ1
静かな病室に、涼しい風が窓から吹き込んでくる。
カーテンが風に煽られ、ひらひら揺れていた。
そのカーテンの向こうに見え隠れする外の綺麗な景色を、彼はずっと見ていた。
俺達六人も、特に何かを言うわけでも、特別感情的になるわけでもなく、静かに口を閉ざしたまま、もう二度と味わえないであろう雰囲気とその空間を、それぞれ堪能しているようだった。
そのまま数分して、空が綺麗な赤色に染ってきた頃、彼は口を開いた。
「ごめんな、こんな事になって。」
彼から発された言葉は、謝罪の言葉だった。
表情は見えなかったが、とても優しい声色だった。
俺はその謝罪になんて声をかければ良いのか分からず、そのまま黙っていた。
他の五人も同じなのか、誰も何も口にはしなかった。
再び、彼が口を開いた。
「最後にな、お前達にどうしても頼みたい事があるんだ。聞いてくれるか?」
その声は確かに優しかったが、どこか苦しさや悲しみが紛れているような気がした。
「…もちろんです。」
俺はリーダーとして、なるべく落ち着いた声で、いつも通りの雰囲気でそう彼に返した。
「娘を、守ってほしいんだ。」
彼はそう言った。
彼の娘の話は、よく彼自身の口から聞いていた。
彼は仕事柄あまり家に帰ることが出来ず、妻も家を出てしまい、その娘は親戚に世話を頼み、そこで暮らしているらしい。
「もう___には、娘の情報が回っているかもしれない。……あそこはどんな情報でも、かき集めてきやがるからな。」
彼は、相変わらず外の景色を眺めながら言った。
短い髪が、風に揺られる。
「俺が死んじまったら、次の標的は娘になる可能性が高い。だからきっと、あいつらはあらゆる方法で娘を狙うだろうよ。」
彼は声のトーンを一切変えず、ただただ穏やかに言葉を紡いでいく。
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くりボッチ - 続き気になるので頑張ってください!!無理しないでくださいねヽ(´ー` )ノ (2021年8月2日 19時) (レス) id: 7d59f0ef3f (このIDを非表示/違反報告)
赤猫君。(プロフ) - ひなさん» 続き気になる...更新楽しみにしてますよ!!!応援します! (2019年10月13日 22時) (レス) id: 8740c32d82 (このIDを非表示/違反報告)
あおい - すごい面白いですね 次の更新も楽しみに待っています (2019年9月16日 21時) (レス) id: 8a1a177507 (このIDを非表示/違反報告)
運子 - 何でこんなに面白いんですか?え?何で?何でだよオ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙。。。スイマセン (2019年7月30日 0時) (レス) id: 794c83e2e4 (このIDを非表示/違反報告)
ぷりん丸 - え????おもろい( ゚д゚)更新がんばってくださぁぁぁぁぁぁぁぁぁい! (2019年7月26日 18時) (レス) id: bd2dd5a67e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひな | 作成日時:2019年4月22日 16時