君を忘れるために【紫】3 (ページ34)

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まだ迷ってる気持ちが分かるからこそ…… ページ34

「どっちかって言うとしつこくない？」
「いや、真っすぐで羨ましいかも」
「俺はさ、Aの中の
　辰哉くんのことは知らなかったよ。

　でもふっかさんがめちゃくちゃ良い人だってことも、
　この数年、元カノを思って悩んでたことも、
　ふっかさんなりに今度は大切にしたいって思ってたことも、
　ここ最近、その元カノに見てもらいたいって気持ちで
　頑張ってたことも
　全部、知っちゃってるから。
　どっちも大事だから」

「蓮……どうしよう。どうしたら……いい？」
「俺はAの気持ちが落ち着くまで待つよ。
　それに今はショックだったんでしょ？
　俺のことは置いておいて、ふっかさんに甘やかされて。
　でも夜の電話だけ、俺にも時間を頂戴。
　それで繋がってれば俺も頑張れるから」

撮影終了時までって約束だったのに、
律儀に今も俺の気持ちに付き合ってくれている彼女。
俺はそんな彼女の優しさに付け込んでるだけなのに。
それでもやっぱり、彼女が”迷ってくれてる”ことが薄い期待として
残っているなら、それにすがりたいほどには彼女のことを好きになってしまっていた。
手放せないくらいなら、少しくらい手綱を緩めることくらい、
大したことないと自分に言い聞かせて。