君を忘れるために【紫】3 (ページ25)

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. 緑side ページ25

「あなたがAさんの担当ではないにもかかわらず、
　映画の件で担当編集さんお一人では仕事が回らない時に
　立候補されたとも聞きました」
「弊社でも力を入れたい案件でしたし、今後を考えたらよい経験を
　積めそうだと思いましたので」
「でも、実際には目黒とAさんが付き合い始めて気に食わなかった？」
「そこは私の範囲外ですので、なんとも」
「でも、スペアキーを借りて彼女の部屋に入ったのはやり過ぎでしたね」
「……っ」

やっとボロが出始めた彼女を一気に追い詰めることにする。

「映画化に向けて、また１本新作を書き上げた彼女に
　映画の特典用の短編を書いてもらうというキャンペーンもあった。
　
　Aさんは締め切りが重なると担当編集さんに念のため、
　鍵を預けていらしたようですが、今回は締め切りの後に
　返すのを忘れていたので、代わりに返しに行きましょうか？と
　あなたが預かっていたそうですね」

「だから何」

「入退室の履歴、見れるんですよ。あのマンション
　鍵の履歴」
「は？そんなもんで何か罪に問えるの？」

「彼女の家に侵入窃盗容疑が問えますね」

「え……？」
「だから、あなたは犯罪の容疑者なんですよ。
　しかも僕らはそれを警察にまだ言っていない。
　警察側も遅かれ早かれ気が付くでしょうし、
　あなたへの目黒の印象も最悪にできる」

「な……侵入窃盗ってなに……」

「Aさんの家、誰かに侵入されて荒らされた挙句、
　泥棒女って書かれてたんですよ、壁に」
「え……違うでしょ」

「何がですか」
「何のことよ」
「何が、違うんですか」

ここまではすべて状況証拠だ。
彼女は上手くやっていた。ほとんど瓦解しかけたそれに、
ひとつだけフェイクを仕掛けた。

「だめですよ。逃げられません」

「だって……ただの会社員が小説書いただけで目黒蓮と付き合うなんて
　間違ってる」
「でも彼女は動いたんですよ。今は”小説家”として頑張ってる」

「あなたが目黒の付き合う相手を、決められるわけじゃない。
　
　応援することは自由だけど、
　夢を見てくれるのもありがたいことだけど、
　越えちゃいけない一線はあるんですよ」

そう言って、自首しません？って言うと、小さく頷いた。

「せめて……目黒くんには言わないで」
「めめも気にしますから、
　成功を妬んでくらいにしておきますよ」