君を忘れるために【紫】3 (ページ11)

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消えてしまいそうな君とページ11

彼女からの「助けて」の言葉ひとつでパニックになる自分は
やっぱり抜けきれてないんだなと思う。

目黒に一言言えば終わるはずのそのSOSを
俺はどうしても俺に向けてだから発信してくれたものだと
思いたかった。

「ずるいよ、A」

佐久間に聞いた自宅の住所と預かったスペアキー。
どうしても仕事を抜けられないアイツはついていきたいって顔を
してたけど、言葉を飲み込んでくれた。

「ちゃんとどうだったか、連絡ちょうだい」

そう言って、念を押された。

タクシーに急いでもらって着いたそこには、荒らされた部屋。
そしてお前のせいだって書かれた、ペインティング。
その真ん中に、ほうけたように座り込む、小さな影。

「A！！！」

近づくと、静かに涙を流していて。
辰哉くん………って。ぎゅっと抱きついてきたから、
そっと抱きしめ返す。

Aにこんな思いをしてほしくはないと思ってたのに。
なんで、誰が、どうして。

って思って怒りが湧いてきたけれど。
今はそれよりも腕の中の彼女の方が心配だった。

とりあえずは佐久間に連絡して、照にも。
あと警察に連絡したかを確認して。
警察の人には弟だと説明してもらった。
俺に姉は居ないけど、年配の男性警察官が
わざわざ俺のプロフィールなんて調べるとも思えなかったし。
何より見た時の反応が、
特に見知った人の顔を見た時のそれじゃなかったから、
大丈夫だろう。

事情聴取が簡単に済むと、今日からしばらくの間は
別の場所で生活をした方がいいという話になった。
犯人はどうやらベランダから侵入したらしく、
6階の彼女の部屋は最上階だったので、
屋上からの侵入だと思うとの話だった。
荷物をまとめて、数日は暮らせるようにして。
警察の方にも話して俺の家に連れて行くことにした。