俺が幸せにしたかった彼女 ページ32
あの事故以来、
眠りが浅くなってしまっていた。
むち打ちにすらならない程度だったとはいえ、
事務所側は事故をそれなりに捉えていて。
送り迎えも出来る限り
マネージャーさんがしてくれている。
運が悪かっただけ。
それは分かっているけれども、
申し訳なくて、心苦しい。
このもやもやは彼女が消えたばかりの頃と似ている。
きっと不安なんだと思う。
事故の外傷はなかったけれど、
やっぱりちょっとショックなところもなくはなくて。
「なぁんでこういう時に、思い出しちゃうかなあ」
夢にはいつも彼女が出てきて。
辰哉くん。って、
あのやわらかな、ちょっと低い声で呼びかけてくれる。
そこから続く言葉はいつだって優しいものばかりだ。
夢の中ではすぐそこに居るのに、
目が覚めるとひとりなことを再認識する。
あんなに好きになれる人にはすぐには出会えない。
忘れられないのだって仕方ない。
彼女は特別に美人というわけでもなくて、
どちらかといえば可愛らしい顔立ちで。
最初は同い年くらいかなと思っていたのに。
年上だと知った時には驚いた。
「頼ってくれて大丈夫だよ！
だって、私、辰哉君より年上だし」
ってちょっと得意げにいうわりに、
何か悩みを話すと俺以上に真剣に考え込むところも。
妙なところで思い切りがいいところも。
ぜんぶ、話しているうちに見つけた、彼女の好きなところ。
少しずつ恋は育っていった。
いつの間にか恋として自覚した感情は、
今まで俺に対して向けていてくれた女の子たちには
申し訳ないけど、初めてのもので。
それに戸惑いながらも、彼女の気持ちを
どうにか振り向かせたかった。
「振り向いてくれたと思ってたんだけどなー」
阿部ちゃんが言うように、
ちゃんと彼女って思ってくれてなかったのかなとか。
ひとり、不安な状況だと余計なことまで考えてしまう。
俺は弱くはないけど、そんなに強い方ではないから。
両想いになれて、少しずつでも話をして。
俺が支えてもらうことが多すぎたから、
これからはもっと幸せにしたい。
と思うようになった矢先に離れて言った彼女。
「今、どこで何してんだろ……幸せなら、良いんだけど。
幸せにしたかったなぁ……」
俺では叶えられなかったそれを、
誰かに満たされているかもしれないと思うと、
彼女の幸せを素直に喜べない自分にまた、
気持ちが落ち込んでいく気がした。
辰哉くんの知らないわたし→←彼女を誰にも渡したくなくなってしまった
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 361人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ひな(プロフ) - きらさん» きらさん、教えて下さりありがとうございます！スマホで更新した際に触れてしまったようです。解除しました！ (2023年2月3日 11時) (
レス) id: d3c82ded38 (このIDを非表示/違反報告)
きら(プロフ) - オリ.フラ立ってますよ！違反報告されてしまう前に解除お願いします (2023年2月3日 10時) (レス) id: 0df082814a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ひな | 作成日時：2023年2月1日 17時
