君を忘れるために【紫】

阿部にも阿部の事情がある ページ27

佐久間が目黒にもやもやする。
というけれど。
きっとそれは恋の一歩手前だと思う。


ふっかはふっかで忘れられない恋に苦しんでいて。

佐久間は恋を自覚したくなくて迷っているんだろう。

目黒は新しく見つけた恋の予感にまっすぐで。

みんなが同じ人相手じゃなければ、
立場的にはダメだけど、
友達として応援できるのに。

「なんでうまくいかないのかなぁ」
「どうしたの？照」
阿部がたまたま横で独り言を聞いていて、
そっと聞いてくれる。
ふっかの元カノが彼女であることは、
阿部は知らない。

だけど……
俺一人で抱えきれなくなっているのも事実だった。
メンバー同士なら変なことにはならないから、
ちょっと相談したいんだけど。
と、告げて。
周りの様子を見計らいつつ、阿部に簡単に説明する。

「ふっかが元カノ忘れられなくて落ち込んでるじゃん。

　あの元カノ、目黒の新しい主演映画の原作者なんだよ。

　で、その映画のアニメで声をあててたのが佐久間。

　佐久間はアニメで関係したころから彼女と仲良くて、
　今は友達って言ってるけど、
　目黒に嫉妬するくらいにはちゃんと好きで。

　でも恋を自覚してはいないと思う。

　目黒は目黒で気になってるから、
　ちゃんとアプローチしてる。
　アイドルって言う前に、全員、相手一緒なんだよ」

「あー……それは知っちゃったら、悩むよね」
「そうなんだよ」

「照、関係ないって出来ないタイプだもんね」

「ほんっと、どうしたらいいのか」
「まぁ、見守っておくしかないんじゃない？
　彼女の気持ちは知らないわけだし」
「一応、この前の食事会で目黒が連絡先を交換した時に、
　俺も一応交換はしてるんだけど。
　連絡する理由とかないからそのままで」

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