SnowMan 短編集 (ページ43)

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ずっとそばに居て1　🤍 ページ43

学校の教室、
ふわりと風で広がったカーテンの向こう側。
人影が見えて、離れた。

何も言わずに教室を出て行ったサッカー部のあいつ。

そして振り返って、おはようって微笑んでくれた君。

あまりに綺麗で一瞬、見惚れた。

惚けている間に柑橘系の香りを残して、
彼女は教室を出て行った。
僕はそれが恋だとは気が付かず……。
違うクラスの彼女と仲良くなるきっかけもないまま
中学を卒業して、
記憶の底に置いたまま。

大学ですれ違った時、どこかで見かけた人だと思った。

目が合って、話しかけられる。
「こんにちは、次の授業の教室なんですけど……」
そう言って示された授業名は、奇しくも僕の授業と同じで。

「良かったら同じ授業なので、一緒に行きませんか」

「ありがとうございます！
私、あんまり場所とか覚えられないタイプなので助かります」

そう言って笑った顔に見覚えがあった。

「もしかして……T中学だったりしますか？」
「そうです！」
「なんとなく見覚えがある気がして」
「ふふふ。ありがとうございます」

そう言って笑ってくれた君の笑顔は
あの頃と変わらなかった。
ふわりと香った、懐かしい匂い。
止まっていた恋が動き始めた音がした。

「課題やった？」
LINEが来て、僕の仕事のことを知っているのか
いないのか、聞けないまま、再会から3か月。

学校の話題だけで普通の友達のように話す
距離感が心地よくて。
だけどそれ以上に進みたいようで、進めなくて。

「進めたいんだけど図書館に
　資料借りに行く暇がなくて」
「なかなか大変だよね。良かったら私が借りた本、
　使う？本当はダメだから
　ちょっとだけ試し読みって感じで」

そう言って何点か資料の写真を送ってくれる。

(また貸しがよくないことは分かってるけど)

そうやってさりげなく助けてくれる彼女に
甘えることにして。
ちょっとでも距離が近づいたらいいなって
思ったことは、秘密で。