【実況者】ニコニコ街の居酒屋___輝きのSunshine【短編集】

おおかみは赤ずきんに恋をした3 ページ23

zmside
「出会い」で終わってしまいたくはないけど、このままで終わるのも、やっぱり嫌だ。

だから、一回だけ、話しかけてみることにした。

怖がられても構わないから、一回だけ…。


『……来た…』


大きな深呼吸をして、ゆっくり出て行った。


『よぉ、人間』

「狼…！！」

『せやで？それがどうしたんや』

「……っ…」


あんまり、ビビってないのか？

逆に嬉しそうやな…。


「…見てたよ、ずっと…」

『はっ…？』

「ずっと木の先に隠れてて、僕のこと見てたよね？お花の冠を作ってくれたのも、君でしょ？」


「ありがとう」と笑う姿に、心がキュッとなる。

可愛いなぁ。


『まぁ、な…。俺はゾム。お前は？』

「僕は鬱だよ。よろしくね、ゾム」


俺は無意識のうちに、彼の……鬱の頰に触れていた。

やっと……触れられた。

やっと、会えた。やっと、話せた。


『やっと…出会えた…』


utside
頰を撫でる手は、とても温かい。

彼の……ゾムの優しさが伝わってくる。

その大きな手に、自分の手を重ねる。

嗚呼、ゾムも同じ気持ちだったんだ…って嬉しくなってしまう。

ずっと会いたかった。

ずっと触れたかった、話したかった…。


『ずっと…出会いたかった…！！』


もう、今までの「赤ずきん」なんて関係ない。

僕達で、新しい物語を作るんだ。

ゾムの温かい体温だ、僕を包み込んだ。


zmside
本当はシンデレラみたいに、可愛い君と優しい俺が出会い、結ばれる結末(エンド)が夢だった。

だけど、出会う事が出来たんだ。

これからの物語も、俺等が作ればいい。

何回も何回も、神様に願ったんだ。

結ばれたい、一緒にいたいと。

それが、今叶ったんだ…！！

…そう思った時だった。

((バンッ！！！

という大きな音と、腹から伝わる激痛。

そして鬱が目を見開いている顔。

撃たれたんだ…誰か他の人間に…。


「大先生！！！」

「ぞ、む……？ゾム！！！」

「大先生、近寄んな！！狼やぞ！！」

「離してシッマ！！ゾムぅ…ゾム！！！」


これ以上鬱を傷付けたくなくて、俺はその場を離れた。

遠くで鬱の叫ぶ声が聞こえる。

ごめん…本当にごめん…！！

泣いているお前を抱き締めたい…でも、出来ないんだ。

どう足掻いたって、願ったって、爪も牙も消えないから。

だから、ただ待ってるよ。

ずっとずっと、あの木の先で。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
終わった…長かった…

最後までありがとうございました

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