【ky】私の彼氏は重度の足フェチ。２【実.況.者】

８１　なにしてたの ページ35

「……っキヨさん！」



肌で感じていた温もりは、すぐに冷たくなる。
私も抱きしめていたはずのレトルトさんは抵抗せずにぴくりともしない。

というのも、キヨさんが私たちの間に入り、すぐに引っ剥がしてきたから。



「なにしてんの」



怒りとか焦りとか、そんな感情ではなく

不安、心配、そして

失望。


キヨさんの目には、失望の色で満ちていた。



「Aちゃんがよろけちゃったから受け止めただけだよ」



へらっと笑うレトルトさんは力なく右手を挙げた。

そんなバレバレな嘘、誰が信じるのだろう。
レトルトさんに突然引き寄せられたウデがまだ赤みを持っている。



「ふーん……そういうことにしといてやる」



いつもならもっと盛り上がる会話と雰囲気が、今となってはピリピリと肌で感じられるほど凍っていた。

明らかな敵対視。



「A、行くぞ」



有無を言わせず迫力。

今度はキヨさんに腕を掴まれ、歩き出した。



「気ぃつけてなー」



この雰囲気を作り上げた当の本人は呑気にそう呼びかけてくる。
貴方のせいですけど！？と切り返して怒鳴りたくなるのをグッと抑え、せめてものキヨさんへの償いとして振り返らないことにした。

びっくりしていたとはいえ、無抵抗だったのは私の落ち度だ。

キヨさんの様子を伺いつつ、いつもより遠慮しない歩幅に胸がじんわり痛くなるのを感じる。



「キヨさん、早い」



モデルばりの身長とスタイル。

そんな人にいくら普段からスタイル(主に脚)を褒められていても、やっぱり差はある。

無理せず歩けばいい話だが、あいにく腕を掴まれたままなのでどうしても私が走ることになってしまった。



「っ、ごめん」



一歩踏み出すごとに、強くなる力。

手首についたキヨさんの手の跡のぶん、怒りを感じた。



「ねぇ、なにしてたの？」



なにしてたの？

それははぐれた後の様子を聞いているのか、それともレトルトさんに抱きつかれていたことに対して聞いているのか。

少なくとも、責めているようにしか聞こえない質問に体を震わせた。



「キヨさんを探してたらレトルトさんに呼び止められて……一緒に探してくれるっていうからお願いしてたの。そしたら急に抱きつかれて」

「……」



黙って話を聞いてくれるキヨさん。

いつもみたいにごめんな、不安だったよな。って抱きしめてくれると思っていた。その時までは。

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