【ky】私の彼氏は重度の足フェチ。２【実.況.者】

６４　オムライス ページ18

「美味しそ〜！」


目の前には金色に輝くふわふわオムライス。
その上にはとろりと濃厚なデミグラスソースがたっぷりとかかっていた。

匂いとビジュアルは100点満点。


これがうちの大学で月一限定メニュー。

その名も【デミグラスオム】だ。

これを買うためにお昼前の講義が終わった瞬間、全員ダッシュで食堂に向かう。
食券の販売機前はいつも大混雑で一種の祭りのようだった。

本当ならこんな激レアメニュー、私なんかが食べれるわけがないのだが今日は違った。



「これ、やる」



なんとキヨさんが食堂優先券なるものをくれ、好きなメニューを選べるようにしてくれたのだ。

それを使ったので悠々と頼むことができた。



「いただきまーす！」



銀のスプーンで大胆に真ん中からざくっとオムライスを掬う。

そのまま口の中に運び_____



「お、おいひぃ〜……」



口の中で卵がとろける。
そこにこってりしたチキンライスが交わり、さらにその上から香ばしい具沢山のデミグラスソースが全てを包み込む。

これは人気が出るのが分かった。



パクパクと夢中で食べていると、視線を感じる。

前を見ると、藤原さんが私を見ながら微笑んでいた。



「な、なんでしょう」



ずっと見られていたらしい。
変な顔してなかったかな！？



「ん、幸せそうで可愛いなって」



なんともないようにさらりと答える藤原さん。

一瞬どきりとするが、それも本当に一瞬のこと。



「ありがとうございます」

「そんな警戒しないでよ、それにほら、ここ」



藤原さんの腕がにゅっと伸びてくる。

その手にはティッシュが握られていて、私の口の端をそれで拭ってくれた。



「ついてたよ」



トドメの笑顔。

これは誰でも照れてしまう。



「あ、ど、うも」



ひゃー、と顔を真っ赤にさせていると、右隣にいるキヨさんが鋭い目で藤原さんを睨んだ。



「おいフジ、てめぇ」



ドスの効いた声で問い詰めようとするキヨさん。
当の本人は知らんぷりで自分のご飯を食べていた。



「なにー？思ったこと言っただけだし、とってあげたのも気付いたからだよ」



余裕綽々、というように答える藤原さんは誰がどう見ても大人だった。



「……Aっ」



キヨさんはじれったそうに私からスプーンを奪う。

そのままスプーンに乗せたオムライスを口の前までずいっと持ってきた。



「……あーん」



焦ったように揺れる瞳。

か、かわいい。
そのまま私はパクッと食べた。

６５　お願い→←６３　食堂

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す