ドレッドノートと天花の舞う夜。 ページ22
＊
｢ 俺はチーズタルトレットとミルクティーをアイスで。Aちゃんはどうする？｣
｢ え。あ、えーと……チョコレートタルトレットとアイスレモンティーお願いします ｣
メニューをパタンと閉じ、テーブルの上に置かれた別のメニューに重ねる。
店員さんがそれを軽やかな手つきで掴み、背を向けて歩いていった。
監督に頼まれたおつかいも終わり、私たちは言った通り月岡さんお気に入りのカフェに来ていた。
木造の暖かい雰囲気の店内は沢山の女性客で賑わっている。月岡さんが普段ここに来ているのか、と思うと少し複雑だった。
月岡さんは運ばれたタルトレットとミルクティーを目にして、美味しそうだねとこぼした。
月岡さんが頼んだタルトレットはクリームチーズ。濃厚なチーズの香りと、こんがり焼けたタルト生地の香りが相まって鼻をくすぐる。
私も手元のチョコレートタルトレットに視線を落とし、軽くフォークを刺した。
｢ タルトレットってフランスのお菓子なんだけどね？タルトを1口・1人用の大きさにしたお菓子なんだ ｣
｢ はぁ…… ｣
｢ どういう事か分かる？つまり、タルトレットはその人の為だけに作られたお菓子ってこと ｣
月岡さんは1口タルトレットを口に運び、そう言って微笑んだ。
このお菓子は、私の為だけに作られたもの。
私の口に運ばれるために作られたお菓子。
つまり、そういう事だろうか。
私はフォークをタルトレットに刺し、1口食べた。チョコレートの甘い香りが口いっぱいに広がる。
何故か月岡さんの言葉が脳裏に響いて、不思議と泣きそうになった。
｢ チョコレートも美味しそうだね ｣
｢ 1口ずつ、交換しましょうよ ｣
ドレッドノートと天花の舞う夜。→←ドレッドノートと天花の舞う夜。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 20人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「オリジナル」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：MinT・パンナコッタ・さやえんどう・すずめ・ひなた＊ x他4人 | 作者ホームページ：なし
作成日時：2017年6月1日 18時
