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「………あの」
ふいに背中から聞こえた声。マスターとは違う少し高めの声。
呼びかけている先は、きっと私だ。
こんな顔じゃ振り向くことも出来なくて、絞り出すように、はい、と返事する。
「これ、どうぞ！」
打って変わって明るく放たれた言葉。
そして、うつむけた顔の前に差し出されたハンカチ。
驚いて、声の主のほうへと目をやった。
「あ、こっち向いた」
深くかぶる帽子から少し見える黒い髪。
ゆるっと着こなしたパーカーから露出する少し暗めの肌。
私が座っているからそう見えるだけなのか、細長い体とは反してスラッと高い背丈。
男性は、きっとキョトンってひどい顔をしているであろう私を見て、口角を上げてフフッと笑った。
「どうぞ」
もう一度、ハンカチを顔の目の前までグイッと出される。
思わず受け取ってしまったけど、それをどうすることもできず両手でキュッと握る。
「隣、座ってもいい？」
嫌だ、なんて言えなくて、コクンと小さく頷くと、彼はパッと効果音をつけたような笑顔で私を見て、私の座るソファに腰をかけた。
「ここ、俺の好きな席なんだ」
なんで隣なんだろう、と疑問に思ったことをタイミング良く回答してくれる。
あ、私が邪魔をしていたのか、と席を立とうとすると、
彼はなんで？と私に言った。
『……邪魔かなって…』
「そんなことない！一緒にお茶しようよ」
お茶しよう、そんな言葉が似合うのはこんな時間じゃなくて、まだ日の落ちていない時間帯な気がして、少し笑ってしまう。
「あ、笑った」
そんな私の表情を見逃さず、素直に口に出す彼に、ドキッと胸が高鳴る。
コトン、とテーブルに置かれるカップ。
マスターが私の頼んだコーヒーと彼が頼んだ甘そうな飲み物を持ってきてくれた。
『ありがとうございます…』
「ありがとう！マスター」
静かに微笑むマスターはすぐにカウンターの奥へと戻っていってしまった。
テーブルに置いてあるコーヒーを一口飲むとちょうど良い熱さと苦みが口の中で広がって、気持ちをホッと落ち着ける。
そういえば、止まらないと思っていた涙も、いつの間にか渇いていた。
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hinata(プロフ) - 美虹さん» ななななんと( ; _ ; )ずっと探してくださってたんですね…！しかも1番好きだなんて言っていただけるなんて！！！すごく励みになりました(TT)ありがとうございます！また機会があれば読んでいただけると嬉しいです！ (2021年5月18日 23時) (
レス) id: ef05115d0f (このIDを非表示/違反報告)
美虹(プロフ) - この小説、海ちゃんのお話の中で一番好きで以前拝読させていただいたのですが、間違ってお気に入り登録し忘れて2〜3年ほど探してました。作者さん削除されたのかな...と思ってたその時そして今日やっと見つかって嬉しくてたまらないです。 (2021年5月17日 17時) (レス) id: ebc7e84ada (このIDを非表示/違反報告)
hinata(プロフ) - やこやこさん» うわ〜何度もっ！嬉しいです！ありがとうございます(T^T)短編とかで書けたら書きたいです！！今後もよろしくお願いします！！ (2019年5月9日 23時) (レス) id: acb1727784 (このIDを非表示/違反報告)
やこやこ(プロフ) - とても大好きな作品で何度も読んでます！またこの作品の2人の日常とか観てみたいです！これからも読ませて頂きます！ (2019年5月9日 21時) (レス) id: 11f5074704 (このIDを非表示/違反報告)
hinata(プロフ) - ひかるさん» ありがとうございます！！そう思っていただけたのなら本望です！笑。廉くんで構想練ってみてます！天然！なるほどっ！頑張りますo(*>_<*)o (2019年4月6日 20時) (レス) id: 1d04177e08 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：hinata
| 作成日時：2019年3月27日 15時
