『パパがいる』

04 ページ4

『何回言ったら分かるんですか？』


「すみません やり直します」








またやってしまった

小さい頃から物事の覚えが悪く

矯正する努力はしているけど

やっぱり不意に出てしまうものは出てしまって

一年以上勤めているこの加工工場でもミスを犯してしまう

『人間なんだからミスはするさ』

なんて言葉で丸く収まるほどのレベルじゃない

まあそんな言葉もかけてくれる職場じゃないけど








『最近遅刻も多いし、若いからってなんでも許されるなんて思っているんじゃないでしょうね。』


「いえ、そんなことは…」


『パート身分でも従業員には変わりないんですよ？しっかりしてください。』


「はい、申し訳ありませんでした」









『パートの身分』って皮肉なんだろうけど

お前も一応パートだからな

最近パートリーダーになったからって社員ズラしてんじゃないよ

見苦しい








『顔に出てるわよ？見てるんだから』


「何がですか…？汗」


『パートリーダーさんには分からないだろうけど私たちちゃんと見てるんだからね？』


「はあ…そうなんですね、気をつけます。苦笑」









気持ちが顔に出ちゃうのも治さないとな…

その前に遅刻が多いのはやばい

最近シフトも減らされてるし

早く正社員にならないと生活が苦しくなる

耐えなきゃ








＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿








「お先に失礼します」


『ちょっと、まだこれ残ってるじゃない』


「すみません。今日のスケジュール分の量しか仕分けてません」


『あのね スケジュールに書いてある仕分けの量は“最低限 ”なの わかる？』


「はい…。でも勤務時間内でめいいっぱい出来るだけやっているつもりです。」


『これでめいいっぱい？じゃあ、休憩の1時間削ってでもやったら？気持ちがあればそれくらいやるわよね？』


「はい…今日はすみません、娘の迎えがありますので、失礼します。」








とんだ無茶言うな

運転席に重たい腰を下ろし一息つく

バックミラーに映る私の顔はひどく疲れていた

作業着もボロボロ

荒く束ねた髪はボサボサで不潔だった








「メイク道具…あったかな」







A子ちゃんに誘われた今日のコンサート

こんなボロボロな顔じゃいけないと思い

久しぶりにメイクなんかしてこうなんて思った

けど…ま、いいか

また一息ついて車を出した

05→←03 TH side

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す