『パパがいる』

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『Aさん！ちょっと！』


「...はい」


『はいじゃないわよ！何ボーッとしてんの？！』


「あ、すみません」


『ただでさえトロイのに最近余計トロイわよ？』


「すみません」


『仕事が嫌なら早くやめたらいいわよ 社員になれないのがよく分かるわ』


「...すみません」








あの日から何をするにも上の空で

こうやって今みたいにまともに仕事もできていない

原因は明確で

恋い焦がれて 振られてもなお思い続けてきていた彼と突然の再会

致命傷だ

いつもの耳が痛い嫌味も説教も右から左に抜けていった

気づけば退勤の時間








「あがります、お疲れ様です...」


....








休憩室に入るなり自身のロッカーにたどり着く前に無意識にしゃがみ込んでしまった

長袖の作業着の袖口から冷たい空気が入り私を凍えさせた

連なるロッカーに囲まれて部屋の中心に寂しく突っ立っているストーブは今や

ただの冷たいアルミの塊でしかない

朝の出勤以来この空間に誰も入室していないことがうかがえた








「疲れた...寒い」








また来た

無定期のこれ(、、)







「私まだ21歳なんだよ〜、、なにこれ虚しい〜」







これ(、、)っていうのは自己嫌悪と自身の哀れな現状に激しく虚しさを感じる

いわゆる病み期(？)

病んでいたくないから自分の中では『これ』って名付けてる

私はまだ21歳

高校時代の同級生は大学生だったり専門学生だったり就職していれば新人社員

ああ、だめ

このままだとそのうち泣き出す








プルルルルルルルプルルルルルルルr...









「はい、もしもし」


『あ。もしもし みかんちゃんのお迎え..


「...あの、まだ仕事終わりそうにないのでギリギリまで置いといていただけませんか」


『いや、お母様 みかんちゃ.. ブチッ








「はあ〜〜〜〜〜〜もう嫌だ、1人になりたい、お金が欲しい、服欲しい、遊びたい」








ついにやってしまった

みかんが生まれてから常に我が子を最優先としてきた

もちろん苦痛では無く

大変な思いもしてきたけど

みかんのみのためだとやってきた

まだいつもの迎えの時間じゃないからさっきの電話だってお迎えの催促ではない

きっとまた体調を崩したんだろう

さっき言ったようにどんなことがあっても娘が最優先だったので

仕事だろうがすぐに飛んで行った

こんな異常な精神状態なのに保育士さんには冷静に嘘がつけた

娘をほっぽっても私の行く場所は無い

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