骨の髄まで染め上げて【完】

十六話 いい子にしてるから早く帰ってきてね ページ16

お母さん………
いい子にしてるから、早く帰ってきてね。


カーテンの間から差し込む光が、空気中に舞う埃を淡く照らしていた。

人を殺めてから一週間が経った……。
お母さんが帰ってくる事はなかった。
だけどそれはいつもの事だった。

お母さんはいつも男の人とお泊まりに行っては暫く帰って来なかった。
だから冷蔵庫の中にある材料で適当なものを作って食べた。


だから、いつもの、普通の事だから不安になる事はない。

なのに………………

なのに………………


お母さんは一ヶ月、二ヶ月、三ヶ月を過ぎても帰って来なかった。

限界のポストに、電気代やガス代支払いの封筒やらが溜まりに溜まっていた。

ついには電気もガスも水道も止まってしまった。

僕は棄てられたのだろうか。

お母さん……………。



玄関へ歩いて、今朝の新聞をポストから取り出した。
溢れんばかりの請求書の束はクシャクシャになり始めてた。


居間に座り、新聞を見開いた。
びっしりと小さな文字の中に、大きいフォントで飾られた見出しを見つけて僕は目を見開いた。


月狂「＿＿＿＿は？」


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