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「うっわかわいいなにこれ好きすぎるんですけど」
オタク特有の早口が25歳の一人暮らしにしては大きな部屋に響く。ああ美しい。どうして推しっていつでも尊いんだろう。
唐突にツイートされた顔を隠すスタンプのない自撮りを見て、そう思いながらベッドに飛び込む。ぼふっと音を立てて沈んだ。
オタクをあまり知らない人からすればただのアホなやつだろうけど、特にまふまふを推している人ならわかるはず。私の推しは美しいのだ。
「はあ……」
いろんな気持ちが混じり合ったため息に、自分で皮肉の笑みをこぼしそうになるけどそれをぐっと抑える。
変わっていく推しが、どうしても怖かった。いや、推し自体が怖いというよりも変化を理由もなく嫌っていた。
もちろん、ただの一介のオタクとしては推しには好きなことをしてほしいと思っている。
だけど。
古参、というか私個人の気持ちとしては、どんどん大きくなって有名になって推しが遠くなるその感覚にどうしても耐えられなかった。
本当に最近、3年前まではDMなんかでやりとりをしたり一緒にゲームをしていたりしたから余計だろう。
今ではテレビで取り上げられるのはもちろん、ドラマの主題歌も歌っていたり顔を出してドラマに出て某有名女優と話していたり。
別にそれはいい。推しの姿を見る機会が増えるだけ。オタクにとって良いこと。
でもそれは推しを好きでいる人が増えるということでもある。
それがどうしようもないくらいに虚しくなってしまうのはわたしだけだろうか。所謂同担拒否というもの?もしかしてリアコ?
ああわからない。推しに対する気持ちだって、全部全部。結局私も『推している自分が好き』とかいう自己満足型のオタクなのだろうか。
わたしは、何百万人とかいう中のひとりであるだけなのに。
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