秀くんだけの短編集。 (ページ3)

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初めてキスをした日　＃１ページ3

雛乃side

『好きですっ』

「...あぁ、」

『雛乃くんってば。軽くあしらわないでよ。』

頬を膨らませ、小さい子供のように俺に怒るAに、頬を緩ませてしまう。

今までより、...なんていうかアイツらしくなったと思う。

大好き。たった五文字なのになぜ俺は言えないんだ。

『雛乃くん、？』

「...」

『...？』

少しあざとく首を傾げるAにキュンとしてしまうのは、俺が悪いんだろうか？

『...はぁ。可愛すぎるんだが。』

「俺は可愛くない。Aの方が可愛いだろう。」

『な゛っ、』

そうやって顔を赤くして俺をポコポコと叩く(尚、これは全く痛くない)。

チャイムが鳴った。俺はAに席に着くよう促すと、文句を言いながらも俺から離れていった。

「...可愛い」

普段はあんなにふざけているのに、授業の時だけは真面目で、先生からも好かれている。

いつだって、Aの周りには沢山の人がいる。

俺が取り付く島もないほど、アイツは、Aは好かれている。

...ふと、゛Aには俺だけでいいのに。゛なんて思ってしまった自分に嫌気がさす。

これが「独占欲」というものだろうか。

「...今は授業に集中だ。」

そう自分に言い聞かせて、またノートにメモを取る。