秀くんだけの短編集。 (ページ1)

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初めて付き合った日　＃１ページ1

Aside

深呼吸をして、教室に入る。

そこには、席に着き、課題をしている彼、雛乃くんがいた。

『偉いね、もう課題終わりそうじゃん、』

「...あぁ、Aか。今日は部活がなくてな。」

『部活は確か......゛アカペラ部゛だっけ？』

「そうだ。」

言葉遣いが堅くて、あまり笑わない雛乃くんは、正直怖がられていると思う。

だけど一人、彼と一緒にいる、言ってしまえば変わっている子が一人。

その子の名前は伊佐和良くん。アカペラ部でＨＢＢというものをやっているらしい。

「A。ぼーっとしているが、俺に何の用だ？」

『え！？あ、忘れ物しちゃって。』

「そうか。早く帰った方が良い。」

『うん。』

生半可な返事をして、また机に視線を戻した彼を眺めてみる。

伊佐くんといるとき、少し頬が緩んだ表情を私にも見せてほしい。

そんなことは、彼には伝えられない。

そもそもかかわりが少ない私と話すことなどないはずなのに。

『ねぇ、雛乃くん。私も一緒に課題して、良いかな？』

「あぁ。勿論だが。」

『ありがと。』

大好き。その言葉を気軽に言えたらなんて楽なんだろう