私の青春、あなたに賭けてもいいですか？ (ページ3)

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# 進路が決まりませんページ3

「としみつさん。」

ガチャっと扉を開け、挨拶がわりの名前を呼ぶ。
目の前には、椅子に座って国語の課題をチェックするとしみつさん。
そしてとしみつさんの口からは……。

「ノックして入りなさい。びっくりするだろう。」

「その言葉久しぶりに聞いた。」

「だろうな。…はい、やり直し。」

これが入る時のやり取り。
何回目だろうなあ。私は開いた扉を閉め、ノックをした。

ｺﾝｺﾝｯ

「…どうぞ。」

「んでね、としみつさん。」

「なした。」

やり直しをさせられ、すぐに話題を出す。

「進路どうしよっかなって。」

「あぁ…お前なにやりたいんだっけ。」

「えー？もー先生忘れないでよー。」

「すまん。」

先生はすこし忘れっぽい。

「１回しか言わないからね」

「ん。」

「私は将来人を綺麗にする仕事に就きたいの。だから、美容師。」

「美容師か…。」

「私に合ってるでしょ。」

「あぁ、うんそうだな」

「あ、棒読み悲しーい。」

「…まだ時間はあるから、頑張りなさい。」

「うん。最初のお客さんはとしみつさんにするからね。」

「…鈴木先生。」

先生からのお願いでも呼び名だけは変えたくない私。

「としみつさん。」

「はぁ…。そのとしみつさんって呼び方、俺の前だけにしろよ。」

「あ、としみつさんの前だったらいいんだ？」

「本当は嫌だけど仕方ないから。」

「やった許可済。」

「としみつよりかはマシだな。」

そうやって笑うとしみつさんの顔が私はとても好きだ。笑うと目のシワがクシャッてなるの。

「あ。そうだA。」

「ん？」

「ここ、また間違えてるぞ。」

そう言って指さされたのは、実力考査の用紙。
もちろん教科は国語。

「あちゃ～。」

「“けふ” の現代仮名遣いは “きょう” だぞ。」

なんだ “ かる ”って。と言いながら呆れ顔をするとしみつさん。
だって国語わけわかんないんだもん。古文とか、百人一首とか、文法とか。

「今度から気をつけまーす。」

「次もし間違えたらお仕置きな。」

「えっ何してくれるの！？」

「いや待て、お仕置きだぞ。」

「うんっ！」

「お前はお仕置きを御褒美と捉えるんだな。意味が違うから小学生からやり直せ。」

だって先生からなにかしてくれるのは特別だから、何をされても私は嬉しい。

そんなこんなで、新学期早々幸せな一日となった。