1杯の珈琲【wrwrd】 (ページ6)

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6話ページ6

「ああ、ここをこうするんですか...！」
「そうやね、そんな感じ」
他愛のない話、よりは中身の詰まった話をしていて、かなり2人で盛り上がっていた。

カランカラン

しかし、お客さんに慈悲はない。
一瞬固まるAさんだが、すぐにいつもの営業モードに切り替わる。

「いらっしゃいませー」

すっと離れてくAさんの袖を引っ張って、止めてしまいたいとは思うがそれは出来なかった。

「ご注文の、クッキーです。」

僕は1度考えたが、クッキーは頼んでいない。
サービスの時にしてもいつもこうは言わない。

「ありがとう。」

内心少し焦っているが、Aさんに限って間違えるはずもない。

とりあえずクッキーを食べ進むと。
小さなメモ帳が入っていた。

宜しければとの前置きのあと。電話番号と、これでLINEもお願いします。のメモが付いてきた。

！？

ええの！？

さらにクッキーを食べるともう1枚入っていた。
九時ごろにお暇でしたらご来店お待ちしております。

九時はこの店は既に営業を終わっている。
つまりこれは、そういうことではないのか！？
と、一瞬期待したものの、編集を教えてくれという事なのだ。

淡い期待も現実に飲み込まれる。
進展は進展なのだが、なにか違う。

ここからなんとかデートに誘わなければ。
まだまだ始まったばかりだ。

「クッキー、どうでした？」

会計の時に彼女に言われた言葉だ。

「美味しかったで。夜、待っててぇな？」

そう言うと輝く目。今日で何度目だろう。
今日始めてみたこの表情は色気に全て振っている女では見られないものだ。

かといって、うるさい馬鹿のこの顔ほど嫌なものは無い。

本当に何故か僕の好みピッタリではないのに、この子は可愛らしいのだ。

「どうかしました？」
「ん？ああ、そのお団子ええなって。」
「営業中は髪が入るといけないので。」

それでも切らずに伸ばしているのはお洒落なのか。長いのええわ。

お金を払って出るとこの近くのアニメイトからシャオちゃんが出てきた。

「お、大先生、っていつもに増してキモイで、なんか鼻の下伸びてる。」

「んふふ、ｼｬｵﾁｬﾝ。」

うわ、とドン引く顔が見られるがこの顔よりもあの子がかわいい。