拝啓、親愛なる総統へ。【wrwrd】

8話 ページ8

「昏睡状態、とは言えませんね。」
医者の言葉だった。本来、昏睡状態は外部からの刺激に反応がないとの事だ。


親しいものからの呼びかけに反応したりはあるが、会話は出来ない。そんな状態なので、うざいの一言でもそれほど状態は悪くないということが発覚したらしい。

逆に言えば、何故それでも目覚めないのか、これは何をしていいのかの線引きが難しい。


昏睡状態には刺激を与えすぎると精神や記憶に異常をきたす。正直、ゾムのあの作戦は昏睡状態ならアウトなのだろう。


つまりあれはいいという事か。
それでも頭を打っている以上慎重にやる他ない。


どのような状態にあるのか分からない彼女は、ここ２、３日なのだが、涙を流すようになった。


元来泣き虫とは言えないし、そもそも泣かないのだが、彼女の中で何が起きているのだろう。
推測しかできないが、答えもいつ分かるのかも分からないが。


その涙は、なんとなく、彼女自身の悲しみと言うよりはきっと他人のために泣いている気がした。


そんな性格だから、だとしか言えない。

「大丈夫だ、泣くな。」


そう一言かけると涙はピタリと止まる。
それならもういっそ、はよ起きろで起きてくれとも思う。


「起きろ、朝だぞ」

とだけ行ってみるととても嫌な顔をされたので、案外話はすべて聞こえているのかもしれない。


その時、突然扉は開き、すごい形相のコネシマが入ってきた。

「今寝てたら夢にAでてきてん！！んでな、グル氏に泣くのやめろって言っとけやってな！！んで、な！」

「取り敢えず、落ち着け。」

興奮状態に陥っているのもそうだが、話の内容も訳が分からん。


その後落ち着いたコネシマに話を聞くと、夢の中で出てきたAが毎日泣くなとだけ言って消えたとのこと。

コネシマの問いには何も答えなかった、ということも。

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