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6話 ページ6

遠くで誰かが泣いている。
ずっと、毎日、泣き止まない。
普段は静かなその空間。真っ白で、真っ暗な。


静かな空間は、急に騒がしくなる。
私しかいないけれど、遠くから少しずつ、段階を踏んで騒がしくなる。


その騒がしさが消えた時、誰かが泣き始める。


今日は、なぜだかいつもよりも音がはっきりと聞こえた。まあ、音が聞こえても私は寝たまま動けないのだけれど。


この空間に今まで無かったことが起きる。
甘い、匂い。チョコミントの、スッキリした匂い。


なんだこれ?と思っても、目を開けても真っ白な空間で、遠くから、少しずつ音が近づいてくる。


「...A......んん...」


聞き取れない。もっと、もっと大きく喋って。
耳を澄まして聞き取ろうとする。
すーっと、私の頬のあたりが冷えた。



「何?なんなの?」


喋ろうとしても声はでない。
ざわざわと止まらない騒がしさは、ある時、一つだけ形を持ってはっきりと私の耳に届いた。


「はよ起きろ」


総統だ。この声は聞き間違えないし、これを聞いて何故だか今までの泣いていた人は総統だったのだ、と私に思わせた。



ざわざわは私から遠ざかる。
きっとこれは、みんなの声だ。



「置いてかないで...。一人にしないで...!待って、待って...!!」


皆とまた、騒ぎたい。一緒に、あの騒ぎに混ざりたい。


寧ろ、なんで私だけこんな所にいるの?
ふと、急におかしいと思って私は周りを見渡す。どう見ても部屋ではない。


ベッドも私のものではない。この真っ白な、微妙に硬いシーツは保健室、だとか病院のものである。


病院?


私、もしかして。
そこまで考えたところで私は猛烈な睡魔に襲われ、そしてそれに抗うことは出来なかった。

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柊花(プロフ) - 柊真さん» 勿体ないお言葉です、有り難うございます!期待に応えられるよう、全力で書いていきますね! (2017年9月2日 22時) (レス) id: 942a3aeb4f (このIDを非表示/違反報告)
柊真 - お話の雰囲気がとても魅力的で凄い尊敬します。更新楽しみに待ってます (2017年9月1日 20時) (レス) id: a9d5b4da57 (このIDを非表示/違反報告)
柊花(プロフ) - 狂魔さん» ありがとうございます!!更新頑張りますよー!! (2017年8月16日 8時) (レス) id: 942a3aeb4f (このIDを非表示/違反報告)
狂魔(プロフ) - とっても面白いです!お話の内容が好み過ぎて……!更新待ってます!頑張ってください! (2017年8月15日 22時) (レス) id: 644d6fc42d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:柊花 | 作成日時:2017年8月15日 11時

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