黄金色に酔う 【我妻善逸】

三十五. side善逸 ページ9

...


ある日いつものように店に足を向けていた
いつもと違うことは俺は地面に足を蹴って思いっきり走っていた。昨日来ることができなかったから一刻も彼女に会いたい欲が募るばかりだったのだ


そして俺は今日勇気を振る絞って彼女をお出かけに誘おうと決めていた。


店に入ると彼女がぱっと目に入ってきて全力で謝った。彼女は全然大丈夫だよと言って太陽のような笑顔を向けた


彼女の髪の方に目をやると
やはり俺のあげた簪は似合っていて、というか彼女に似合いすぎていてきらきらと光る
俺から貰った特別なものだからいつも付けてる、という彼女はやはり愛らしくてたまらない


嬉しそうに鈴の音をカラカラと鳴らす



Aちゃんは音を聞かれるの恥ずかしいから聞かないで！と必死で言うけれど、そんなのやめられるわけがない


というか無意識に絶対にこぼすもんかと自分の中であるのか耳をいつもより慎重にすましてしまうようで


「Aちゃんの心の音もとっても可愛いけれど
声は鈴の音のように耳に心地よく入ってきて、」


俺から彼女の思っていることは筒抜けだ
だから俺も正直に伝えないと不公平でしょ？


俺はちゃんと彼女に口で伝える

すると彼女は俯いて黙りこくってしまう



『っ...』




ああああ可愛い！！彼女の心音が高鳴ってそれは軽やかに弾んでいて顔は果実のように真っ赤っか


彼女はどうやら俺はずるい。俺みたいに耳が良ければよかった、なんて思っているようで...





でも残念。ダメだよこの耳はあげない

俺の自慢の耳できっとこの耳を授かったのはきっと
君の声を、心音を、聞くためにあるのかもね




俺はそっと彼女の手を握って俺の胸に添わせた





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