四十一. ページ19
...
あの日の夜からしばらく日が経って
走って、走って、
どのくらいだろうか
振り替えると見慣れた街並みはいつの間にか消えて見えなくなっていて、周りには緑が広がっている
私は街からできるだけ存在を遠ざけようと無我夢中で走っていた
以前の私の身体とは想像を絶するほどに身体能力が上がっていて木々をぴょんぴょんと移り飛んだり夢幻に走ることができたりと今でも驚きの連続である
そんな自分の身体や周りの環境にも慣れてきて
私、動物みたい
かつてはできなかった、できないと思っていたことができている期待感と自分への拭えない不信感で煮詰まる
この森には幸運にも人ひとり住めるくらいにはちょうど良い小さな小屋があって私はそこに今は仮住まいしている
ただし朝や昼間は日差しが激しく入ってきてしまうので隅の影で小さくなって過ごす日々だ
.....さて、私はこれからどうしようか
この血なまぐさい道に不幸だとしても足を踏み入れてしまった今、行く先も生きる目的も不透明だ
そして前進しようとしても足が鉛のように重い
見えない誰かに足を後ろから掴まれてるように思える時だってある
可笑しいな、私は鬼になってしまったけれど
何も喰らってなどいないのにね
私は小屋の隅に座る
日向はまだ差していないけれど何となくそこに尻をつけていた
冷たい夜風が木に染み付いてしまっていて背筋が凍りそうだ
昔、お月見をしていた時にお団子でお腹いっぱいになってやがてそこで眠ってしまった故長く夜風に当たりすぎて、そしたら菊代さん、毛布を掛けてくれた
そして風邪を引くからこんなところにいつまでもいるな、と叱ってくれた
...もう忘れたい
滲んで、目尻から露が溢れ出す
空を見上げると星がぽつぽつと輝いている
善逸くんは満天の星空がよく見えるところとか知っているのだろうか
彼、うるさいのに変にロマンチックなところあるから
ひとりで見る夜空って皆を遠く思えてしまうな
実際、そうなんだけれど
星のように眩い彼と
見る星空はどんなだろう
私の隣には彼が居て
可愛らしくにこやかに微笑んで、もしそれが夏だったら織姫と彦星出会えたのかな、とか子供騙しな夢ひとつで盛り上がるの
『無理なのに...』
また私は善逸君のこと想って
想っては止まらなくなって
私から流れる透明な大粒も止まらなくなって
床に落ちて朝露となって蒸発していった
...
179人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
うなぎのたれ(プロフ) - わかめしさん» わあ、ありがとうございます!お優しすぎますよ...!読んでいただいて幸せです!!頑張ります! (2020年4月8日 12時) (レス) id: c4967ed5e3 (このIDを非表示/違反報告)
わかめし - とてつもなく胸がギュンとします!これからの展開がすごく気になります!作者さんのペースで更新頑張ってください! (2020年4月7日 20時) (レス) id: 7ee9cc8e34 (このIDを非表示/違反報告)
うなぎのたれ(プロフ) - おもちさん» コメントありがとうございます〜!ふたり共々赤面しまくる日々なので本当に幸せにさせてあげたいなって思います!励みになる言葉ありがとうございます! (2020年2月20日 21時) (レス) id: c4967ed5e3 (このIDを非表示/違反報告)
おもち - 包みが羨ましいなんて可愛い笑笑善逸も可愛いし! まとめて抱きしめたいぐらい2人が可愛くって絶対幸せになってほしいです! (2020年2月18日 8時) (レス) id: 203d84a786 (このIDを非表示/違反報告)
うなぎのたれ(プロフ) - siriusさん» 楽しんで読んでもらってとても光栄です!可愛いおふたりをこれからも見守ってください!! (2020年2月1日 19時) (レス) id: c4967ed5e3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:うなぎのたれ | 作成日時:2020年1月22日 16時