四十. side善逸 ページ18
...
Aちゃんの事を言っているのか？
いやでもこのお婆さんは俺と初対面だし誰かと勘違いしてる可能性だって、
違う、逃げるな。
だってこの人の音は....
「私は菊代。ここの店主さ」
菊代さん...
Aちゃんがよく話してくれていた人だ
この人の音はあたたかくて優しい音がする
そしてどれも嘘偽りのない
じゃあ、
じゃあさ、、
「ほん、とに、Aちゃんは...」
声が震える
鬼に喰われてしまった？
アレが俺とAちゃんの最期？
息が詰まりそうだ
喉をガッと誰かに捕まれたように酸素が回らない
自分の心臓がドクドクと徐々に音を立てていく
全てが込み上げてきて
何よりも自分の非力さに憤りを感じて
はらりと一筋、零れでた
すると、息を漏らす音が聞こえた
「あんたが思っているような事にはなってない」
涙を拭け、と言うように無言で手ぬぐいを渡された
「先日の夜更けにここを出ていった」
「へっ...？」
なんで？どういうこと？
「どこに...何処に行ったんですか！」
菊代さんはすんとして小さくまた息を吐いて俺を見た
「自分であの子を探しな。理由もそこではっきり分かるし、きっと待っているだろうから...ああそれと」
手を出してくれ、と言われるままに手を出すと
俺がAちゃんにあげたはずの簪が大事にそっと置かれた
「忘れ物があってね。もう一度あの子に付けてあげて欲しい」
そう言うと菊代さんはくるっと俺の身体を回して背中を押してはさあ、行った行ったと声を上げる
「見つからなくてべそかいても、
心が折れそうになっても、
もうここには戻ってくるんじゃないよ。
その時は私があんたをぶん殴ってやる」
「ひぃ.....！」
怖すぎるんですけど！この人！！
Aちゃんの尊敬する人ちょっと怖すぎない！？
いやいい人なんでしょうけど！！
...でも菊代さんをよく見ると
その瞳にはうっすらと水の膜ができてゆらゆらと揺れていて
耳を立てると
いっぱいいっぱいに苦しそうに音が鳴っていた
「必ず見つけ出します。俺は強くないけれどめげずにAちゃんを守り抜きます」
「.....ああ」
口元を綻ばせて優しく菊代さんは微笑んだ
「どうかお元気で。ありがとうございました」
くるっと振り返らずにいつものように俺は店を足早にあとにした
「おふたりどうかご無事で。幸せに」
柔らかい声が暖かい風に乗せられて飛んでいった
.....
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うなぎのたれ(プロフ) - わかめしさん» わあ、ありがとうございます！お優しすぎますよ...！読んでいただいて幸せです！！頑張ります！ (2020年4月8日 12時) (
レス) id: c4967ed5e3 (このIDを非表示/違反報告)
わかめし - とてつもなく胸がギュンとします！これからの展開がすごく気になります！作者さんのペースで更新頑張ってください！ (2020年4月7日 20時) (レス) id: 7ee9cc8e34 (このIDを非表示/違反報告)
うなぎのたれ(プロフ) - おもちさん» コメントありがとうございます〜！ふたり共々赤面しまくる日々なので本当に幸せにさせてあげたいなって思います！励みになる言葉ありがとうございます！ (2020年2月20日 21時) (レス) id: c4967ed5e3 (このIDを非表示/違反報告)
おもち - 包みが羨ましいなんて可愛い笑笑善逸も可愛いし！ まとめて抱きしめたいぐらい2人が可愛くって絶対幸せになってほしいです！ (2020年2月18日 8時) (レス) id: 203d84a786 (このIDを非表示/違反報告)
うなぎのたれ(プロフ) - siriusさん» 楽しんで読んでもらってとても光栄です！可愛いおふたりをこれからも見守ってください！！ (2020年2月1日 19時) (レス) id: c4967ed5e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：うなぎのたれ | 作成日時：2020年1月22日 16時
